人口減少 福知山市長選挙を前に・上

2024年05月29日 のニュース

 任期満了に伴う京都府福知山市長選挙は6月2日に告示され、現職と新人2人の三つどもえの争いになるとみられる。人口減少による生活環境の変化、コロナ禍後の地域活性化、農林業や経済の振興、老朽化したインフラの整備など、福知山市が抱える課題が山積する中、まちづくりのリーダーに誰を選ぶのか。人口減少▽公共交通▽観光振興の3課題を追った。

■人手不足が顕在化■

 住民基本台帳を基にした人口動態によると、福知山市の人口は2023年で7万6075人(1月1日時点)。10年前の8万1121人(3月31日時点)から6%減っている。福知山市に隣接する京都府・兵庫県の北部9市町は軒並み9%減~19%減。出生数も同様に、22年の福知山が615人(1月1日時点)で、9年前の808人(3月31日時点)から24%減。9市町は27%減~49%減となっている。

 隣接市町と比べると人口、出生数とも福知山市の減少幅は比較的緩やかだが、市内の中小企業、福祉や保育施設などでは数年前から人手不足が顕在化しており、営業日数の減少、サービスの縮小を余儀なくされる事業所や施設があり、影響が広がっている。

 業界に関係なく、転職も含めた正規雇用者の確保は共通の課題。市もそうした課題を認識し、北京都ジョブパーク、ハローワーク福知山、隣接市などと協力し、年に数回、市内外での合同就職説明会や企業説明会を開いている。

 福知山商工会議所中小企業相談所の桐村信太郎所長(48)は「各種説明会の企業側の参加申し込みはすぐに埋まる状況が続いており、人材確保にかなり敏感になっている」という。一方で、新卒採用は全国的に獲得競争が激化しており、初任給が上がっている都市部に対し、地方都市は苦戦している現状がある。一部では「色々と行動しても人が来ない」との声が出ている。

 採用情報のPR方法はチラシ、雑誌、新聞、インターネットなど多様化し、転職サービスといった業態も出現して選択肢はある。ただ、利用したからといって採用につながるわけではなく、費用対効果で悩む企業の姿も見える。

 桐村所長は「若手はもちろん、40代、50代といった年齢層でも人手不足の声を聞くようになっています。特効薬的な取り組みが無い中、地道なPRの積み重ねが必要で、地元の企業の魅力を知ってもらえる機会がさらに増えれば、助けにはなる」と話す。

■危機感募る福祉業界■

 人手不足に特に危機感を持つのが福祉業界。市内に事業所を置く12法人でつくる民間社会福祉施設連絡協議会の岩吹泰志会長(57)は、「コロナ禍以前から職員採用に応募が来ない状況が続いています。今後、高齢化が進む中で、10年後の社会を支え切れるかは分からない。真剣に考えないといけない問題」という。

 福祉施設では、職員が賃金の良い別業界へ移ってしまうケースがある。施設側が賃上げを検討しても、国からの報酬が主な収入なため、大幅な改定が無い中では都市部企業のような賃上げが難しく、人材確保の壁になっている。

 ICT(情報通信技術)やロボットの導入、働き方改革など、業界内で積極的な就労環境の改善に取り組む動きがあり、岩吹会長は「介護職にはきついイメージがあったと思いますが、そうした部分が大きく変わってきています。仕事のやりがいと併せてアピールしていくことに知恵を絞っていきたい」とした上で、「福祉が充実するまちに向け、行政もしっかり考えてほしい」と話す。

■自治会も役員不足■

 地域でも自治会の役員のなり手不足など、人口減少の影響を受ける。今年度、大江町の小谷自治会が、隣接する蓼原に合流し、市内の自治会総数は325自治会となった。

 小谷では住民が5戸6人、ほとんどが90代という状況で、自治会長が業務を果たすことが難しくなっていた。そんな中、昨年の台風7号では集落への道路が土砂でふさがり、孤立した。

 蓼原とはこれまでから、災害時の助け合いなどで交流があり、合流を要請。話し合いを重ねて合意を得た。市も書類作成の相談に乗るなどで手助けをしてきた。

 蓼原の仁張衞自治会長(68)は「一人も取り残さない地域をつくることが、災害では特に大切です。これから人数は減っていくので、自治会間の共助が必要になってくると思います」と話す。

 自治会の人材不足は今後、他の地域でも広がっていくとみられる。

 各企業、地域は人口減少でも諦めることなく、今できることを選び、実践している。課題を共有し、これからをともに考えるリーダーが求められている。

 

写真(クリックで拡大)=企業は合同就職説明会に積極的に参加しているが…

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