さすが「不老長寿の果実・ムベ」 豪雪で全滅覚悟したが再生
2022年04月20日 のニュース

不老長寿の果物と伝わるムベを栽培する京都府福知山市夜久野町の西垣自治会(大西敏文自治会長)は、昨年暮れの記録的な大雪で被害を受けたムベ農園の復旧作業をした。全滅かと思われたが、ムベ自体はほとんど折れずに残っており、鉄パイプを使った棚を再生してつるを戻した。多くの花芽を付けており、今秋も収穫できそうという。
ムベ農園は、約7アールの休耕田を開墾。2017年冬に約100本の幼木を植え、試行錯誤しながら栽培してきた。高さ約2メートルの棚に下がる実は、量、質とも上々になっていたが、昨年末、一晩で約70センチという近年にない積雪を記録。棚は雪で覆われ、支柱の鉄パイプ約100本の大半が倒れてしまった。
その後も降雪が続き、「大半の木が折れているようで一からやり直すしかないだろう」と覚悟を決めていたが、雪解けを待って2月下旬から3月上旬にかけて調査。すると、ムベはつる性植物のため、重い雪の下でもしなった状態で耐えていたらしく、約9割が被害を免れた。このため4月11日から復旧に着手。業者に棚を組んでもらったあと、地元の15人ほどが作業して元の状態にした。

■再度の雪害回避に強化策■
少子高齢化が深刻な中で「西垣を元気村に」と始めた事業。再度の雪害を避けるために一層強化した棚を作ることにし、支柱の鉄パイプを今までの1・5倍に増やし、その上に針金を張り巡らし、ムベのつるを持ち上げて針金入りのひもで結んで棚に誘引した。
ムベは、実を滋賀県近江八幡市の大嶋奥津嶋神社が皇室に献上することで知られる。天智天皇が狩りに行った際、元気な老夫婦に出会い、長寿の霊果として差し出された実を食べ、「むべなるかな(もっともだ)」と答えたことが名前の由来という。
西垣地区では、天智天皇と、かつての天田郡夜久野町の頭文字から「天夜(あまや)」と命名。地元限定で販売していたが、集団生産地が全国で3カ所程度と少なく、昨シーズンは購入希望の連絡が全国各地から入り、110人以上に送った。
衣川秀正事業部長は「軌道に乗った矢先の出来事でショックでしたが、木が助かってうれしい。雪対策はしていましたが、今後は積雪時の雪下ろしなど見守りも強めたい。樹勢が衰えていて、今秋は前年のような収量は望めませんが、少しずつ手をかけて元の状態に戻し、市の特産品に育てたい」と意気込む。
23日ごろから、結実を安定させるための人工授粉作業を始める。
写真上=頑丈な棚を再び組んだムベ農園
写真下=雪の重みで押しつぶされたムベ農園の棚(2月1日)