「おじさんの飲み物」イメージを一新 公立大生らが若者向けの日本酒
2022年03月10日 のニュース
京都府内の若者たちが若者向けに考案した日本酒が完成した。「おじさんが飲むもの」という日本酒のイメージを一新しようと、新語「チル」をコンセプトにした純米吟醸酒で、31日までクラウドファンディング(CF)で先行予約販売をしている。
若者の日本酒離れに頭を悩ませていた綾部市にある酒蔵・若宮酒造の木内康雄社長が、福知山公立大学の谷口知弘教授らに依頼し、産学連携プロジェクトが昨年5月に始動。原料となる酒米「五百万石」は、府立綾部高校農業科の生徒が栽培、収穫した。
商品企画は谷口ゼミの3年生3人が中心となって考えた。若者に愛される日本酒にしたいとアイデアを出し合う中で、若者がSNSなどで使用する用語「チル」に着目。「やすらぎ」「リラックス」「癒やし」などの意味がある。
日本酒の商品名を「CHILL(チル)な夜に癒やしを得る」とし、そのコンセプトをもとに、京都工芸繊維大学デザイン専攻4年生の中川桂さん=福知山高校出身=がラベルをデザイン。中川さんは「ストリート系のチルをイメージし、デザインを突き詰めました」と話し、温泉に癒やされるサルと湯けむりを描いた。
公立大生から「香りはそこそこで、味はしっかりめ」と要望を受けた杜氏でもある木内社長は、関西圏ではほとんど使用されていない酵母を初めて採用するなど、新しい酒造りに挑戦。純米吟醸だが大吟醸並みに手を掛け、試飲を繰り返し、「すっきりとしたさわやかな風味」に仕上げ、飲みやすくなっている。
1300リットルを製造。飲み方は冷酒のほか、炭酸で割ったり氷でオンザロックにしたり、カクテル風にするのもお勧めという。
CFのサイトは「キャンプファイヤー」を活用し、300ミリリットル入り2本セットで2500円、720ミリリットル入り2本セット4500円などの予約を受け付ける。いずれも綾部市の間伐材を使用したコースターに、府立工業高校の生徒がレーザーで刻印したものを添える。商品の発送は4月から順次行う。
CF後は一般販売もする予定。このプロジェクトは次年度も継続し、新しい学生たちと別のコンセプトで酒造りをするという。
プロジェクトリーダーを務めた公立大学3年生の嶋野将之さんは「日本酒は、このプロジェクトで初めて飲みましたが、おいしいことを知りました。お酒は人生を豊かにするひとつだと思っています。みなさんにとっての『チル』な時間にこのお酒を飲んでほしい」と話している。
写真上=完成した「CHILLな夜に癒やしを得る」
写真下=試飲をする木内社長、嶋野さん、谷口教授(左から)