「人は生かし、生かされている」こと説く、高浄寺・いだかれ観音
2021年07月09日 のニュース

京都府福知山市岩間、曹洞宗高浄寺(塩見芳徳住職)の境内に、石で出来た大きな観音立像がある。手を合わせる観音様の前に、観音様に背を向けた座禅僧がいる一風変わった造りで、名前を「いだかれ観音」と言う。
観音様と僧は一つの石で彫られ、台座を含めた高さは5メートルある。座禅僧の像は実は“仏僧”ではなく“人間”を表している。その人間を見守るように、後ろから観音様が優しい気持ちで祈っているという構図だ。
人が仏に祈り手を合わせるのではなく、仏が人を見守るように手を合わせてくれている。人は生かし、生かされていることに気づくことで、安らかな心を持って日々を過ごせるようになる-との教えを説いている。
塩見住職(55)は「ご先祖様と一緒ですよね。信心、無信心は関係なく、みんなが神や仏にいだかれていることに気づくことができれば、今生きていることのありがたみを知り、生き方が変わると思います」と話す。その思いを形にして伝えたいと、いだかれ観音を造り、2004年3月に建立した。

観音像のデザインは、塩見住職が描き起こした絵コンテを基に、紙粘土や高さ80センチの木像にしてイメージを固め、石像にした。
いだかれ観音の名前は塩見明徳前住職(89)が付けた。明徳前住職は「人間だから私も怒ることがあるし、腹を立てることもある。でもね、観音様の前に来ると『こんなんじゃだめだな~』と思って、気持ちを落ち着せることができる」と話し、観音像に手を合わせ返した。
「拝むより 拝まれたまいし わが姿 御手の中に ゆるし生かされ」
「足をくみ 手をば組んでの 坐禅僧 おがみゆるされ み仏の中」(塩見明徳)
写真上=座禅僧(人)を後ろから優しく包み込むように見守り、観音様が手を合わせている
写真下=高浄寺の山門