過疎高齢化のまちに憩いの場 築100年の古民家カフェ開店
2020年01月29日 のニュース
過疎高齢化が深刻な京都府福知山市夜久野町駅前のJR上夜久野駅前に昨年暮れ、築100年の古民家を改装した「宮Cafe(カフェ)」がオープンし、地元住民らの憩いの場になっている。元高齢者福祉施設職員、宮崎葉子さん(59)が「一人暮らしのお年寄りが増え、寂しい境遇の人もいる。だれもが気軽に立ち寄れる場所をつくりたい」と構想を温め、実現させた。郷土色豊かな料理、歌声喫茶などのイベントも好評で、常連客が日々増えている。
宮崎さんが旧市域から嫁いだのは約35年前。そのころは駅前という立地環境で、鉄道利用者も多く、一帯には商店や旅館などが軒を連ねてにぎやかだった。しかし、時代の変遷で人口が急速に減り、近年は空き地が目立つようになった。カフェ開店を思い立ったのは5年前。起業セミナーを受講し、ノウハウを身に着けた。
カフェは一昨年秋に自宅隣の空き家を借り、昨夏から半年がかりで改装。「くつろぎながら触れ合える場所に」と内外装ともこだわって設計した。大工に任せるだけでなく、約20人のボランティアの力を借りて壁塗りなどに汗を流した。夫の会社員、嘉和さん(59)も休日には作業に加わり、12月1日に開店した。
玄関を入ったところは吹き抜けにし、3部屋をつなげて開放感あふれる空間にした。椅子席、カウンター席があり、20人近くが利用できる。薪ストーブや古い足踏み式ミシンなどを置き、昭和レトロの雰囲気を演出。地元の人が描いた絵画や撮影した写真も飾る。
メニューには、夜久野高原の肥沃な黒土で育った野菜を使ったピザ、特産物の黒豆入りのおにぎり、おばんざいや日替わりセットなどを用意。手作りのシフォンケーキなどのデザートやコーヒー、紅茶などの飲み物もある。
イベントも定期開催。1階ではギターとハーモニカ演奏家の歌声喫茶を開き、2階は貸し会場で、占いやハンドマッサージなどに利用されている。
近くの高齢者福祉施設に開設当初から一昨年末まで24年間勤めた宮崎さんは、地元で高齢者に積極的に声かけをする。「自宅に閉じこもりがちで、栄養が偏っている人もいます。経験を生かして高齢者の生活の支援をし、人生を豊かにする店にしたい。年齢を問わず多くの人が心の交流をできる場にしたい」と夢を語る。「自分自身も、老いていくだけでなく、『まあまあ面白かったやん、私の人生』と言えるようにしたい」と続けた。
定期的に足を運ぶ近くの居相昌子さん(85)は「昔は駅近くに第3ゲレンデまであるスキー場があり、駅を行き来する人の行列ができた。今はすっかり寂しい光景になりましたが、カフェができて、再び明かりがともった気がします。笑顔を絶やさず接客してくれて、とても居心地がいい場所。料理もおいしくて何時間でもいたくなる」と喜ぶ。
営業時間は午前8時から午後7時(ラストオーダー午後6時30分)まで。8と9が付く日が定休。貸し会場の利用料は午前、午後それぞれ800円。問い合わせは宮崎さんの携帯電話090・7369・4631へ。
写真上=古民家を改装したカフェの前に立つ宮崎さん
写真下=昭和レトロの落ち着いた店内