ひと掻き、ひと掻き日本の文化守る 丹波漆が初鎌
2019年06月05日 のニュース
神社仏閣・仏像など国宝・重文の修繕に欠かせず、漆器など日本が誇る芸術を支える丹波漆の採取作業「漆掻(か)き」が5日朝、福知山市夜久野町で始まった。京都府無形文化財「丹波の漆掻き」技術を守り伝えているNPO法人丹波漆の会員たちが今西中の植林地に入り、漆の木1本ずつに、丁寧に刃をあてていった。
漆は縄文時代から塗料、接着剤として使われ、日本の各地で採取されていたが、戦後は化学製品や中国からの輸入漆が主流となり産地が激減。西日本では一時、夜久野だけになった。そこで伝統文化を守っていくためにも質の良い夜久野産の採取量を増やそうと、NPOが文化庁などの支援を受けながら町内数カ所で植栽を進めてきた。
今西中では2011年に府仏具協同組合青年会に協力してもらい、傾斜地を整地して30本の苗木を植えた。シカ、イノシシの被害と闘いながら22本が生育。このうち今年は10本を掻くことにした。
午前9時過ぎ、NPOの岡本嘉明理事長が山に感謝の日本酒と菓子を供え、「事故の無いよう作業していきましょう」と会員たちに呼びかけてから作業が始まった。
1本ずつの育ち具合を見定めながら、丹波独自の工夫をした専用の鎌を樹皮にあて、同じく専用のかんなで今年最初のキズをつけた。
この後、日数をかけながらキズの本数と幅を増やしていき、にじみ出てくる漆の原液を小さなヘラで掻き取って集める。1本の木から1シーズンに採取できるのは、およそ牛乳瓶1本分。今年は今西中のほか、小倉で自生する2本の計12本で漆掻きをする。暑い夏場が盛りで、9月末ごろまで続いていく。
写真=濃い緑の山中で漆の木に初鎌をあてた(5日午前9時30分ごろ、福知山市夜久野町今西中で)