500円定食が人気、夜久野「ななっこ」惜しまれながら閉店

2023年03月25日 のニュース

 京都府福知山市夜久野町の山あいにある畑地域で約10年間営業を続けた小さな飲食店「ななっこ」が25日で閉店する。地元に商店がなく、買い物弱者が増えるなか、地元の主婦グループ「七つの里」が運営を続けたが、高齢化で後継ぎがなく、店じまいの決断をした。

 畑地域は高齢化が急速に進み、現在の高齢化比率は約75%。地域の7自治会で、2012年度から府の支援を受け、地域再生の取り組みを始めた。「ななっこ」はその一環として、地域住民が気軽に集える場として13年秋に開店した。

 施設は、地域の玄関口にあたる桑村自治会の三差路にある。店内は20席で、予約で最大20人が利用できる別室がある。メニューはおまかせ定食、焼きそば、うどん、焼きめし、コーヒーの5種類。地元の季節感ある食材を使い、栄養バランスを考えた品数が多い500円のおまかせ定食は、常連客に人気の看板メニュー。コシヒカリのご飯が1回おかわり無料ということもあり、圧倒的に注文が多った。

 店内は家庭的な雰囲気で、スタッフの女性たちの優しい接客が好評だった。口コミやネットを通じて情報が広がり、市内外から定期的に足を運ぶ人が増えた。特に昼食時は満席状態で、順番待ちが必要な日も。定期的に訪れる一人暮らしのお年寄りや友人グループ、団体予約もあり、地域に欠かせない存在になっていた。昼食時以外は、農作業の休憩時に長靴姿でコーヒーを飲みに来る人もいた。

■「我々にとっては五つ星の店」■

 火、木、土曜日の午前10時から午後5時まで営業。スタッフは当初5人だったが、現在は4人となり、平均年齢は78歳。後継者を探し続けた。だが、報酬もわずかで、名乗り出る人はなく断念した。2月下旬、閉店を告げる貼り紙をすると、来店客が一層増えた。

 「旧明正小の跡地を使って営業を続けてほしい」「営業時間を短縮して続けることはできないか」などと、存続を望む声が相次いだ。

 物価の高騰が続くなか、値上げはせず、何とか帳尻を合わせて運営を続けた。その理由を片山恵美子代表(75)は「飲食店というより、過疎高齢化で地域が寂しくなるなか、交流の場にしたいとの思いが強く、もうけは考えていなかった。心のよりどころとして来店する方もあり、一方的な都合で閉店するのは正直つらい。利用していただいた方には感謝の気持ちしかありません」と心境を語る。

 兵庫県朝来市の農業、大槻隆さん(74)と会社役員、田中政教さん(67)は、ななっこのファンで、週2回ほど連れだって通った。「毎回、メニューが変わる薄味の家庭的な料理が魅力でした。元気なお母さんたちの接客が良く、見ず知らずの者同士でもすぐに仲良くなれる場でした。我々の年代にとって五つ星の店。再開してほしい」と閉店を惜しんだ。

 

写真上=店を切り盛りした4人の主婦(一番右が片山代表)
写真下=昼食時ににぎわう店内

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