観音寺所蔵の重要文化財「木造不動明王立像」の複製披露 3Dプリンター活用し制作
2025年09月11日 のニュース
ステンレス鋼製
京都府福知山市観音寺、高野山真言宗・観音寺(小籔実英住職)が所蔵する国指定重要文化財「木造不動明王立像」の複製像が、3D(3次元)プリンターで制作された。11月には、複製像とともに普段は公開しない実物も一般に公開する。
同寺の不動明王立像(高さ45・5センチ)は、平安時代前期(9世紀)に造られた。不動明王立像としては国内最古とされ、2022年に重文指定の答申がされた。
喜びの半面、全国で仏像の盗難事件が相次いでいることを懸念した小籔住職(73)が、同寺の文化財を守る観音寺新奉賛会の宮嶋誠一郎会長=滋賀県、鋳造会社経営=に、防犯目的としてレプリカを制作できないか相談。宮嶋会長の恩師で、神戸大学名誉教授の森脇俊道さんを通じて、京都大学工学博士の山路伊和夫さん(61)を紹介された。
府中小企業技術センター中丹技術支援室=綾部市=の協力を受け、同センターが所有する3Dスキャナーで実物の形状などをデータ化。そのデータを元に山路さんが3Dプリンターで造形した。プリンターを24時間稼働させ、2週間かかった。上半身と下半身を別々に制作し、つなぎ合わせている。
素材はステンレス鋼製で重さは15キロあり、耐食性、耐熱性に優れている。山路さんが金属で仏像を造形することは初めての挑戦だったという。
このほど、同寺で檀家らにお披露目された。山路さんは「(複製像を)触ると、肉付きや優しさが分かり、みなさんにも触ってほしいと思うようになりました。10万年はもちます」とあいさつし、檀家らが感触を確かめていた。
小籔住職は「重量感のあるものを作っていただき感激しました。レプリカというと軽い響きがあるので、私は『再生仏』と呼びたいと思っています。なで仏というものがあるように、自由に触っていただける仏様として親しみを持ってもらえたら」と喜んでいた。
今後は台座などを取り付け、11月中に同寺で開く特別展に合わせて奉納される。期間中は重文の不動明王立像と、同寺の市や府の指定文化財なども一緒に展示することにしている。
写真上(クリックで拡大)=制作に関わった山路さん(右から2人目)ら
写真下(クリックで拡大)=重文の不動明王立像(左)と複製像