トンネル事故、震災 鉄路守り抜いた日々を鉄道の季刊誌で証言 元機関士の足立和義さん
2025年07月17日 のニュース
蒸気機関車を多角的に取り上げる季刊鉄道趣味誌「蒸気機関車EX(エクスプローラ)」Vol61(イカロス出版発行)に、旧国鉄福知山機関区で蒸気機関車の機関士として働いた足立和義さん(86)=福知山市和久市町=の体験談が掲載された。トンネル事故の救援や震災時の鉄路確保など、現役時代の体験を詳しく語っている。
足立さんは1957年に福知山機関区に就職。整備係を経て、63年に機関士になった。無煙化後は首席助役などを歴任し、国鉄の民営化後は福知山運転所長などを務め、95年にJR西日本を退職した。
誌面では、蒸気機関車の乗務員による回顧録「鉄(くろがね)の馬と兵(つわもの)ども」のコーナーに21ページにわたり登場。「三丹の鉄路へ捧げた鉄道人生」と題して、福知山機関区時代の印象深い出来事などを振り返っている。
同機関区に入って2年目の59年、播但線の生野-長谷駅間にある真名谷トンネルで回送列車が脱線・転覆し、乗務員2人が即死する事故が発生した。足立さんは救援用の蒸気機関車で現場に急行。連結した貨車に大量の枕木を積んで向かい、復旧作業にあたった。土砂降りの中、枕木を担いで夜通し作業した経験を振り返り、「凄惨な現場で作業していて、鉄道事故の重大さが身に染みてわかりました」と述べている。
また、95年1月17日、兵庫県の福崎鉄道部長を務めていた際に阪神・淡路大震災が発生。1月末の定年退職を4カ月延長し、播但線を避難者や見舞い客のための迂回ルートとして活用できるよう尽力した。全国のJR各社にディーゼル車の運行協力を呼びかけるなど、奔走したことを明かしている。
誌面には、脱線・転覆事故の様子や福知山機関区の構内で出番を待つ蒸気機関車などを捉えた写真も多く掲載されている。本のサイズはA4変型判で、154ページ+折り込みピンナップ。定価税込み2860円。
足立さんは「これまで、鉄道人生について他人にしゃべることはあまりありませんでしたが、今回は昔のことを思い出しながらいろいろ話させてもらいました。つらい思い出もありますが、一般的には知られていないことも載っているので、多くの人たちに読んでほしい」と話している。
写真(クリックで拡大)=本を手にする足立さん