府の技術継承事業活用し復元 醍醐寺の十六羅漢図、200年前の美しさを取り戻す
2025年03月26日 のニュース
京都府福知山市猪崎、臨済宗南禅寺派・醍醐寺(一常宗観住職)に残る約200年前に描かれた掛け軸「十六羅漢図」が、半年以上にわたる修復作業を終えて同寺に戻ってきた。伝統産業に関わる若手職人の育成を目的とした府の事業を活用したもので、時間を巻き戻したかのような美しい仕上がりに、住職らが喜びの表情を浮かべた。
修復は「京都未来の匠 技の継承事業」の一環で実施した。同事業は、府や市の文化財には指定されていないが、歴史が深く、高度な技術で作られた工芸品などを若手職人と熟練の職人が協働で修復・復元し、伝統技術を後世に残すことが目的。修繕にかかる費用の3分の2を府が負担している。
2015年度から始まった同事業は、これまで京都市内の社寺などに残るものが主だったが、貴重な資料が多く残る北部地域にも目を向け、23年度に南丹市、今年度は福知山市の醍醐寺に残る掛け軸が採用された。
今回、修復した十六羅漢図は、文政9年(1826)ごろに高源寺=兵庫県丹波市=の弘巖玄猊住職が描いたもの。弘巖住職の弟子で醍醐寺23代住職、済洲玄橘住職に贈られたという。
虫食いや破れも鮮やかに修復
「長い年月で劣化が進み、あちこちに虫食いや破れがあったほか、触っただけで崩れてしまいそうなほど生地が傷んでいました」と、一常住職(38)は修復前を振り返る。
掛け軸は全部で9幅あり、ふすまやびょうぶなど表具全般の製作を手掛ける静好堂中島=京都市北区=に昨年7月に持ち込まれ、半年以上かけて修復した。
作業は掛け軸の解体から始まり、破れた部分を元の絵の色に合わせた紙で埋めたり、浄化水で汚れを落とすなど、繊細さが求められる工程が続く。ベテラン職人たちの助言を受けながら、同社の30代~40代の女性職人3人が中心になって行った。
掛け軸の受け渡しは19日に同寺であり、修復に関わった京表具協同組合連合会の役員らが訪れ、一常住職や総代らが見守る中、完成品を披露した。 美しい姿を取り戻した掛け軸に、一常住職は「うれしいのひと言に尽きる。作品が元通りになったのはもちろんですが、若い世代の職人さんが手掛けたことも大きな価値があると思います」と言い、継承事業についても、「素晴らしい技術でも仕事がなければ廃れてしまう。こういった取り組みがもっと盛んになれば」と期待を込めた。
来月24日から一般公開予定
今回修復した掛け軸は、4月24日に営まれる同寺の開山忌法要で披露し、5月中旬まで一般公開する予定。
写真(クリックで拡大)=歴史ある掛け軸が美しさを取り戻した