境内の漆で弘法大師像修復 夜久野町の東光寺
2023年06月09日 のニュース
京都府福知山市夜久野町額田の高野山真言宗・月輪山東光寺(大月康永住職)は、本堂内に祭る弘法大師像の修復作業を進めている。修復には同寺の境内に植えられていた丹波漆が使われる。11月26日に開眼法要を執り行い、像は一般公開される。
同寺は平安時代の887年に創建され、江戸時代初期の1621年に現在地へ移転した。現在は本堂が府暫定登録文化財になっている。
弘法大師像は1676年に寄進されたと同寺の記録に残る。
高さ約45センチ、横約40センチ。今回の修復では木造の像本体のほか、像を安置するための厨子、曲録と呼ばれるいすなど全体を修復する。
豪華な装飾が施された厨子内に、弘法大師像が鎮座する立派なものだったが、劣化が進んでいた。大月住職は2008年に同寺の住職に就いたときから修復したいと考え、今年が弘法大師の生誕1250年ということもあって、修復に取り掛かった。
像は一度すべて解体し、彩色、下地層を取り除いたあと、欠損部分の補修などを行って当時の状態を取り戻す。
同寺の漆は、全国の漆産業が衰退する中、伝統を守ることに尽力した丹波漆の第一人者で、同寺の檀家でもあった衣川光治さん(1911~94)が植えたもの。
一昨年冬、大月住職が境内の漆を利用できるか、衣川さんの活動を継ぐNPO法人丹波漆に相談。スタッフの山内耕祐さん(35)=同町下千原=が確かめたところ、十分な量が採れると分かり、昨シーズンに漆掻き(漆採取)をした。8本から約2000グラム採取。その一部が同寺に提供され、今回の修復に使われる。
大月住職は「念願だった修復に取り掛かれ、そこに貴重な丹波漆を使えるのは感慨深い。新しくなった像が、歴史や漆の伝統を後世に伝えるものになればうれしい。修復が終わったらぜひ見に来てください」と話している。
写真上(クリックで拡大)=修復前の大師像。欠損や色あせが目立つ
写真下(クリックで拡大)=境内で漆掻きをする山内さん