「賛否両論の鉄道館」まとめ 紆余曲折経て近く着工

2022年07月06日 のニュース

 京都府福知山市で、休館中の「福知山鉄道館ポッポランド」が、下新町から岡ノの福知山城公園親水広場内に移転新築される。予算案や工事請負契約締結案が市議会6月定例会で可決され、来夏の開館に向け今月中に着工する見込みだ。

 工事請負契約締結案の採決は、賛成議員が13人、反対が10人と割れた。市民有志22人が「着工延期と計画見直し」を求めて市議会に提出した請願書は不採択となった。両丹日日新聞社にも賛否両論の投稿が相次いだが、紆余曲折を経て着工目前にまでこぎつけた形だ。

 旧施設は2018年3月、建物の老朽化などで休館。市は同年7月に関係団体、市民公募委員からなる委員会を設置。委員会は再開を前提に5度協議し、6カ所への分散配置を提言した。

 そこに個人から建設・運営費として2億円の寄付があった。市にとっては渡りに船。ただ、場所は「ゆらのガーデン近接地」など4点の条件付きだった。

 初めはゆらのガーデン駐車場に建てる計画だったが、浸水の心配があり高床式にすることから建設コストがかさみ、景観も悪くなると地元から危惧する声が出た。

 そこで駐車場より高台になっている親水広場に建設場所を変更。7億2300万円の建設費が示されると、市民からは「事業費が高額すぎる」「城の景観を損なう」などの声が上がった。その後総事業費は1億4千万円減額して約5億8300万円に。市の産業政策部次長と商業担当課長は「実質的な市の負担額は約1億7600万円。他は寄付金と国、府の補助金を使う」と説明する。

 景観については「城周辺の景観との調和を考え、建物の高さを抑え、瓦ぶきの屋根、漆喰調の壁にするなど工夫している。市景観計画に定める基準に適合させた」と話す。

■年間入館者5万人の目標 「運営費は賄える」■

 新施設は、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)平屋建て約584平方メートルで、歴史展示、交流企画展示の2エリアからなる。

 リアルさを追求したSL機関助手体験や電車運転シミュレーターを導入。ゲーム感覚でなく、運転士の苦労を理解できることが大切だとして、「旧施設で(語り部として)好評だった鉄道OBもスタッフに加える」という。

 各地の鉄道館は、旧駅舎活用や引退車両展示など鉄道遺産の活用が目立つ。鉄道館2号館(広小路通り)のC58は、旧福知山鉄道機関区にも配備された、鉄道のまちの“生き証人”だが、新施設への移設は運搬費や劣化で難しいという。

 旧鉄道館は入館無料で、年間入館者は開館2年目の1999年が2万8983人と最も多く、その後は徐々に減少。2005年度から1万1千人台が続き、13年度にはついに1万人を割り込んだ。

 その後、西日本鉄道OB会福知山地方本部が地元商店街から運営を引き継ぎ、元機関士らのスタッフ15人が交代で常駐。来館者に現役時代の思い出話を交えながら展示物を説明するなどテコ入れに努め、1万7000人前後が訪れるようになっていた。

 新しい鉄道館は年間5万人の入館が目標。市は年間運営費を約3700万円と試算し、「入館料や体験料、土産物収入で賄える」と自信をみせる。「相乗効果を狙い、城、SL展示の広小路、三段池公園との回遊性をもたせたい」とも考えている。

■請願者「早い段階から計画公表し、市民の意見を」■

 計画見直しの請願提出者の一人は「不採択でしたが、10議員に賛成していただき、市政に関心を持つきっかけになった。早い段階から市民に計画を公表し、事業を進める際には場所も含めて市民の意見を反映させてほしかった」と残念がる。

 鉄道の歴史を学ぶ場として、展示物の説明に力を注ぎ、JRや鉄道ファンと連携し、集客が見込める多彩な企画展を開くなど、より良い運営をしてほしい。負の遺産とならないように。
 
 

写真=本体着工に向けて整備が進む建設予定地

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