国定公園の大江山でナラ枯れ確認 30年前のような拡大懸念

2020年12月17日 のニュース

 丹後天橋立大江山国定公園の大江山連峰、京都府福知山市大江町佛性寺周辺で、ナラ枯れが確認され、被害の拡大が心配される。30年ほど前にも大きな被害が出たことから、早急な対策が必要とされる。

 ブナ科の樹木の葉が枯れるナラ枯れは、全長約5ミリの甲虫、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が病原菌を木に運ぶことによって起こる樹木の伝染病で、菌が幹の水の通りを悪くさせ、枯れていくという。

近年では日本海側を中心に被害が広がり、森林景観が損なわれたり、木材資源の減少などにつながったりするほか、枯死した木は倒木の危険性もあり、問題視されてきた。

大江山周辺でナラ枯れが確認されているのは、佛性寺の千丈ケ滝近くの市道二瀬川大江山線沿いで、樹種はコナラやミズナラ。大江山の自然に詳しく、大江山5合目でカフェを営む伊田浩三さん(67)は、今年6月ごろにナラ枯れに気付いた。

葉が茶色や赤褐色に変色するとともに、幹の中を出入りするため、カシナガが穴を開け、根元付近には大量のおがくずがたまる。木はいったん枯れると、生き返ることはないという。

伊田さんは、見えるところだけでも枯死している木は40~50本あると推測。「林の中に入ると更に増え、全部で100本ほどに被害が出ている」とみている。

大江山周辺では1993年ごろにも大規模なナラ枯れの被害が出たことがあった。場所は大江山連峰の鍋塚の稜線の一つで、大量の木が枯死した。府中丹広域振興局森づくり振興課によると、その規模は11ヘクタールにも及んだという。

当時、大江町役場に勤め、現在は環境省自然公園指導員(大江山担当)の赤松武司さん(68)は「山肌が赤茶色に染まり、その後、葉が落ちて枝だけになっていきました」と振り返る。

枯死した木はナラ類を中心に伐採され、数年後に各種の樹木の苗木が植えられた。

■餌がなくなりクマ出没の恐れ■

また、ナラ枯れによって、木の実ができなくなり、クマの餌が不足する可能性がある。赤松さんは「今年はドングリなどの木の実が不作で、こうした時にカシナガによって木が枯れ、実がならなくなると、クマが人里にまで下りてくることも考えられます」と不安視する。

ナラ枯れ対策としては、被害を受けた木の伐採や幹への殺菌剤注入、幹にビニールを巻いてカシナガの侵入を防ぐ方法などが考えられる。

森づくり振興課では、現地でドローンを飛ばして空から状況を確認したところ、1カ所に1~5本単位でナラ枯れの木が点在していて、大きな被害が出た1993年ごろの状況と比べると、まだ規模は小さいとしているが、今後広がる可能性もあるとみている。

同課では「これからも現地の状況を注視しながら、市とも相談し合い、対策を検討していきたい」と考えている。

伊田さんは「時間が経てば経つほど被害は拡大していくと思われます。虫が越冬のため木の中に入るこれからが駆除のチャンスとみられることから、速やかな対策を取ってほしい」と願っている。


写真=葉が変色したナラの木

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