口元見える透明マスク 手話用に聴覚障害者団体が試行錯誤
2020年05月07日 のニュース

新型コロナウイルスの感染拡大防止によるマスク着用が広がるなか、聴覚障害者や手話通訳者がコミュニケーションに悩んでいる。手の動きと同様、口の形や表情も手話の大切な要素だが、マスクをすると口元が隠れてしまい、聴覚障害者にとっては意思疎通が困難になる。かといって外せば、感染リスクが高まる。そんな状況を改善しようと、福知山市の当事者らを含む京都府北部の団体が、円滑に手話ができるよう、口元の見える透明マスク作りを進めている。
不織布や布といった口元が隠れるマスクには、これまでも不便さを感じていたが、会話時にはマスクを外して対応してきた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が一変。マスクを外しての手話に感染拡大リスクが心配される事態となった。
これを受け、福知山、京丹後、舞鶴、綾部、宮津5市と与謝野、伊根両町の聴覚言語障害の当事者や支援団体などでつくる「京都聴覚言語障害者の豊かな暮らしを築く北部ネットワーク委員会」(古高雅明委員長)が、透明マスクの試作を進めており、メンバーたちがSNSやメールなどで、工夫や作り方を伝え合っている。
全国的にも同様の取り組みが広がり、北部委員会では他地域を参考に、ビニールバッグをリメイクしたり、不織布の中央を切り抜いてナイロン袋を縫い付けたものなどを試作。カチューシャを活用した透明のフェイスガードも試し、実用できそうなものを試行錯誤して作っている。
北部ネットワーク事務局の菅井奈津子さん(37)は「聴覚障害者の病院への付き添いなどで、手話通訳者が活用を始めていますが、息苦しくなったり、透明な部分が曇るなどしてしまい、改良が必要です」と話す。
また、手作りには機能性や衛生面に課題が残るため、商品化をしてくれるような企業との連携を目指す。
古高委員長(65)は「これまでもずっとあった問題で、多くの人に関心を持ってもらえればありがたい。聴覚障害者や通訳者の悩みを知っていただき、手話や透明マスクに理解のある環境が広がればうれしいです」と期待している。
写真=手話には口の形や表情も大切な要素。伝わるようにと試作したマスクなどを持つ古高委員長(左)と菅井さん