古里で書展を続けた書家 大江町出身・大江甲拾さん逝く 心温まる作品が人々癒やし
2026年02月03日 のニュース
京都府福知山市大江町河守出身の書家、大江甲拾(本名・康允)さんが1月8日、名古屋市天白区の自宅で亡くなった。86歳だった。大江さんは、実家のある大江町で年2回、「ふるさと展」と名付けた書展を開き、柔らかな書体でつづった心温まる言葉の作品を発表してきた。「癒やされる」「元気をもらえる」と評判を呼び、毎回多くの人が訪れていた。
大江さんは大江高校卒業後、日本板硝子に入社し、名古屋支店長を最後に55歳で退職した。子どもの頃から字を書くことが好きで、大江中学校時代には朝日新聞書道展で文部大臣賞を受賞。これを機に本格的に書の道を志し、20歳で師範の資格を取得した。
2004年の台風23号で、母親が暮らしていた実家が床上浸水の被害を受けた。復旧作業を経て再び住めるようになったものの、母親が体調を崩したため、名古屋へ呼び寄せた。その後、実家の活用方法を考え、地元活性化を目的に、自身の作品を展示するギャラリー「甲拾書院」に改装した。
05年から始めた「ふるさと展」では、「大江山」「ふるさと」「百人一首」など毎回テーマを定めて作品を展示。「自分を追い込まないように」「どんな時もどんな人にも思いやりを」など、人生に寄り添う言葉が多く、漢字と仮名を織り交ぜた柔らかな調和体で表現していた。
13年9月の台風18号で実家ギャラリーが再び床上浸水した際も、「浸水で落ち込んでいる人たちが、作品を見て元気になってくれれば」と、予定通り書展を開催した。
近年は書に墨絵を添えた作品にも挑戦。「毎回テーマを決めるのが大変で…」と語りながらも、来訪者の存在を励みに制作を続けていた。
初めて訪れた人にも気さくに声をかけ、言葉の意味や絵の意図を丁寧に説明。「元気をもらった」「人生の糧にしたい」と話す人も多く、市外からの来訪者も少なくなかった。
昨年10月には46回目となる「ふるさと展」を25日間にわたって開催。その際も大江さんは元気な姿を見せ、「少しでも書を見て、ほっこりとした気分になってほしい」と周囲に語っていた。
和紙伝承館で作品展
現在、大江町二俣二の和紙伝承館で、大江さんの作品14点を展示する作品展が開かれ、来館者が一つひとつの作品を感慨深げに鑑賞している。
この展示は、大江さんが生前に作品を託していたことで実現した。毎年10月に実家ギャラリーでの「ふるさと展」を終えた後、和紙伝承館でも展示するために作品を渡すのが慣例となっており、亡くなる前の昨年にも、大江さんは作品を届けていた。
いずれも隣接する田中製紙工業所(二俣一)で漉かれた雲龍紙を使用している。同工業所5代目の田中敏弘さん(64)は「ご高齢にもかかわらず、パワーが満ちあふれ、それが字にも表れていました。人に対しても細やかな気配りをされる方で、多くの人たちの心に染みる作品を残された。ぜひ作品展を通して、大江さんの魅力を感じてほしい」と話している。
展示は3月22日まで。土、日曜と祝日に開館する。入館有料。
写真上(クリックで拡大)=昨年10月のふるさと展では、元気な姿を見せていた大江さん
写真下(クリックで拡大)=和紙伝承館で開かれている作品展










