【両丹日日新聞創刊80周年】幻の創刊号を探して― 市立図書館に残る最古の紙面

2025年10月01日 のニュース

 10月1日で、両丹日日新聞(前身は両丹時報)は創刊から丸80年を迎えた。だが、社には創刊号が残っていない。1953年(昭和28年)の大水害で資料が流され、戦後間もない頃の新聞は失われている。創刊号には何が書かれていたのだろう。京都府福知山市駅前町の市立図書館中央館を訪ねた。

 同館では、両丹日日新聞は永年保存の扱いで、ある程度の分量ごとに製本され、バックヤードで保管されている。80年前の創刊号が残っているのか問い合わせたところ、最も古い紙面は76年前の両丹時報の1949年(昭和24年)2月11日付だと分かった。

 昭和時代の紙面は閲覧できないが、今回特別に許可を得た。手続きを済ませたあと、自動書庫システムでバックヤードから運び出してもらい、2階の研修室で閲覧させてもらった。

 ハードカバーの表紙を広げると、少し黄ばんだ状態の紙面が現れた。劣化が進んでいて、破れた箇所もある。現在は日刊紙だが、当時は5日ごとの月6回発行で、購読料は1カ月10円と書かれていた。

 紙面は2ページ建て。記事を読むと、そこからは戦後のまちの息遣いが読み取れた。市の昭和24年度予算をめぐる審議の記事では、各課から1億円の要求に対し7600万円に減額したものの、なお2千万円の削減が必要とされ、市会(市議会)委員長会での協議が続く様子が伝えられている。併せて「行政整理を断行せよ」と、当時の竹内正夫市長の手腕に期待を寄せる論説も載っていた。

 別の記事では、確定申告が必要な人の9割が申告を済ませながら、3割近くは納付に至っていない実態が報じられている。さらに、当時の金融機関だった福知山信用組合の役員改選で、篠木玉治氏が新組合長に選ばれたニュースも。財政、税、金融といった社会の基盤を支える動きが記録されていた。

 人の顔が見える記事もある。「あのひと このひと」と題された小さな欄には、前年の市会選挙で女性候補を応援した助産師・山田よしの氏の姿が紹介されていた。今の「人物天気図」の原型とみられるコーナーで、地域の暮らしのなかにある人間模様を温かく伝えている。

 さらに2面には、三岳村の農協を襲った強盗事件の一部始終が細かく書かれていた。宿直の若い男女が農具で殴打され重傷を負いながらも、女性が隣家に助けを求め、消防団や村民が捜索に加わり、犯行からわずか3時間後に逮捕に至ったという。紙面を追うだけで、緊迫の状況が伝わってきた。

 創刊号を見ることはかなわなかったが、昭和24年の紙面は、戦後の福知山がどんな課題を抱え、どんな人々が生きていたかを語っていた。図書館のバックヤードには貴重な新聞が残っており、約80年の歩みを今に伝えてくれている。

 

写真上(クリックで拡大)=76年前の紙面(右)と現在の紙面
写真下(クリックで拡大)=自動書庫システムでバックヤードから運び出す

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