「変化人」最後の一人に 漫画家のこうの史代さん 福知山の日々描き、夢紡ぐ
2025年05月15日 のニュース

京都府福知山市在住の漫画家、こうの史代さん(56)が、市のPR企画「福知山の変」の最後を飾る10人目の変化人に選ばれた。13日に市佐藤太清記念美術館で記者会見があり、福知山での日々や今後の創作活動への思いを語った。自身が書き下ろしたオリジナルポスターを披露したほか、6月に市内でライブペインティングをすることも発表した。
市が2022年から取り組んできた福知山の変は、治水や経済対策などに奮闘し、かつての福知山のまちをつくった戦国武将・明智光秀にあやかり、挑戦し、まちを変えていく人を「変化人」と名付け、挑戦や応援の輪を広げてきた市民参加型の企画。オリジナルポスター(14日付の両丹日日新聞4面にも掲載)を制作し、紹介している。
広島市出身のこうのさんは、1995年に漫画家としてデビュー。代表作「夕凪の街 桜の国」は手塚治虫文化賞新生賞などを受賞、映画化やドラマ化もされた。広島の軍都・呉の戦災を描く「この世界の片隅に」はアニメーション映画がロングラン大ヒットを記録。今年4月には、福知山が舞台の最新作「空色心経」を発表した。
9年前に移住暮らし楽しむ
2016年に夫の古里・福知山市に移住。普段の生活では、規格外の地場産野菜を買って帰って夫と喜び合ったり、ランニングなどを楽しんでいるという。創作活動に行き詰まったときは散歩や神社巡りをして気分転換している。
「結構楽しく穏やかに暮らしています」とこうのさん。とはいえ、「切羽詰まってこないとできなかったりするので、穏やかすぎると漫画には良くない部分がありまして」と笑いを交えながら、福知山での暮らしについて語る。
今年で漫画家生活30年を迎え、「漫画家はなるよりも続けることが難しいと言われるけど、私はなるのが結構難しくて、意外となってからは順調で、割と自分のやりたいものを作り続けられています。運が良かった」と振り返る。
こうのさんは「友だちからの手紙のように漫画を読んでくれるといいなと思いながら描いています。楽しい日常みたいなものも手掛けられたら」と、これからの創作活動にも意欲を見せた。
来月にライブペインティング
今回発表された福知山の変のポスターには、日々をともにするインコの「Tさん」を肩にのせた自画像を描き下ろした。頭上には、「空色心経」の原稿やネーム、愛用の万年筆が舞い、こうのさんの頭の中を表現している。
記者会見では、福知山の変に選ばれたことをきっかけにこうのさんが始動させた「こうの史代まちなかお絵かきプロジェクト」を発表。こうのさんが描いた架空の映画看板を広小路通りの福知山シネマの外壁に掲示しているほか、6月15、16両日に福知山城で、29日に福知山シネマでライブペインティングを行うという。
最新作の舞台 明智藪付近を巡る
このあと、こうのさんの案内で報道陣は由良川沿いに移動。こうのさんのお気に入りの散歩コースを歩きながら、「空色心経」の舞台となった明智藪(蛇ケ端御藪)付近などのスポットを巡った。
3年続いた福知山の変は今回で最終回。当初から企画を担当している市秘書広報課の宇都宮萌係長は「挑戦する市民の一歩一歩を変化人として可視化し、まちの物語を1ページずつ更新していきました。今回で一区切りですが、まちは今も誰かの挑戦とともに変わり続けています」と話していた。
写真(クリックで拡大)=最新作の舞台となった明智藪付近の散歩道でポスターを持つこうのさん