28水の浸水記録を伝える“水位板” 古民家から公会堂へ移設
2025年05月16日 のニュース
京都府福知山市大江町波美の古民家の玄関に、昭和28年(1953)9月に発生した台風13号による大水害「28水」での浸水位を表す木板(縦約5センチ、横約30センチ)が取り付けてある。古民家に住んでいた水位観測員の男性(故人)が付けたもので、民家は近く取り壊される予定になっており、地元自治会が水害の歴史を後世に伝えようと、近くにある公会堂に木板を付ける計画を立てている。
木板を付けたのは旧建設省近畿地方建設局から依頼を受けて水位観測員として活動した岡野敏雄さん。岡野さんの父も観測員だった。
岡野さんは自宅そばを流れる由良川の水位を毎日朝と夜に観測。大水になった時は1時間ごとに計り、建設局に電話で連絡していたという。
28水の時も自宅が浸水していくにもかかわらず、水位を確認したあと、2階から隣家に逃れた。水がひいて落ち着いたあと、自宅を襲った洪水の記録を残そうと、玄関の白壁の汚れを基に水位を示す木板を軒下に打ち付けた。

木板が取り付けられている場所の高さは、地面から約2・7メートル。水は住宅2階の直下まで達した。板面には「昭和28年9月26日 台風13号」と記されている。
岡野さんの次男、佐藤博行さん(78)=同町河守=は「父親は家に人が来るたびに木板を見せ、28水時の水位について説明していました」と振り返る。
波美区内には28水時のはっきりとした水位を示すものが無いため、地元自治会が公会堂の外壁に同じ水位の表示を計画。業者に依頼して機械で測量し、公会堂に同じ水位の線を引いた。古民家が取り壊されたあと、しばらくしてから木板を取り付けるという。
波美の廣瀬敬治自治会長(76)は「地区内には以前、民家の壁などに28水時の水位を示す跡が残っていましたが、リフォームなどをしたことで、ほとんどが無くなっています。公会堂に水位を示すことで、住民らに防災意識を高めてもらいたい」と願う。
岡野さんは1992年まで水位観測員を務めた。佐藤さんは「父が戦争に行った時は、家族で水位を観測したこともあったようです。28水を知る人が少なくなっているので、木板を見て、水害の恐ろしさや防災の大切さを知ってもらうきっかけになれば」と話している。
写真上(クリックで拡大)=岡野さんが取り付けた木板
写真下(クリックで拡大)=木板を見る佐藤さん(右)ら