亡き父の残した家族写真を手掛かりに住宅設計、コンクールで最優秀賞 福知山出身・井尻歌衣さん
2025年05月02日 のニュース
京都府福知山市前田出身の設計士、井尻歌衣さん(25)が、修士設計のコンクール「第22回JIA関東甲信越支部大学院修士設計展2024」で最優秀賞に輝いた。亡き父が残した家族写真を手掛かりに、記憶を建築空間に再生するという独創的な手法が高く評価された。
同設計展は、井尻さんが東京工芸大学大学院工学研究科建築学・風工学専攻の2年生だった昨年3月に開催されたもの。井尻さんは「私の記憶のヒロイックフレーム-建築空間体験による記憶の設計-」を出品し、審査の結果、52作品の中から最優秀賞3人のうちの一人に選ばれた。
父が、成長する娘・歌衣さんを家の内外で撮った数々の写真を、ヒロイックフレーム(作品の印象的な場面)として捉え、父が亡くなったあとに建て替えた現在の実家と重ね合わせることで、父との記憶を建築的によみがえらせるという新たな設計手法に挑戦した。
土間には、かつて身長を記録した柱をシンボルとして配置。和室、居間など、どの部屋にいてもその存在感を感じられるようにしたほか、幼いころ庭でプール遊びをした記憶から、旧玄関先にジャグジーを設け、父との思い出が、ふとよみがえるような工夫を施している。
最優秀賞を受け、井尻さんは「この設計は私の中の父の記憶を扱った作品で、非常に個人的なテーマであるがゆえに、研究としてふさわしいか迷った時期もあったけど、母に背中を押してもらったり、教授にたくさん指導いただいて、最後までやりきることができました。そんな研究が認められてとてもうれしいです」と喜ぶ。
現在は東京都内の設計事務所に勤務する。「担当している案件の実施設計や施工の過程を通じて、『建てる』とは何かを日々学んでいます。覚えること、考えることが多く、毎日必死ですが、一つひとつのことを丁寧に身につけて成長していきたいです」と力を込める。
写真上(クリックで拡大)=最優秀賞に選ばれた井尻さんと設計した住宅の模型
写真下(クリックで拡大)=身長を記録した柱をシンボルとする土間空間