障害者と健常者、恩師と教え子 短歌と写真に思いを重ねて 大江町の和紙伝承館でコラボ展
2025年04月19日 のニュース
脳梗塞の後遺症で障害者となった歌人と、健常者の写真家によるコラボ作品展が、京都府福知山市大江町二俣二の和紙伝承館で開かれている。2人の関係は元教員とその教え子。「障害や病気で生きづらさを抱えながら、懸命に生きる人たちの夢の形」をテーマに詠んだ短歌と、丹後二俣紙に印刷された風景写真の合作10点が並ぶ。6月1日まで。
元教員の歌人は山口秀樹さん(64)=福知山市かしの木台=、教え子の写真家は片岡司さん(48)=奈良県五條市=。
35年を経て再会 構想持ち上がる
山口さんは、かつて奈良県五條市の中学校に勤めていた。当時の教え子だった片岡さんと、35年の歳月を経て昨年再会し、今回のコラボ展の構想が持ち上がった。
山口さんは2018年冬に脳梗塞で倒れ、そのリハビリ中に短歌を始めた。後遺症を患い、障害者となったが、21年春、府立中丹支援学校の副校長として、車いすで職場復帰を果たした。その後、丹波歌人社福知山支部に入会し、歌を詠んでいる。
片岡さんは「写真は心を写すもの」との考えから、あえて写真ではなく“写心作家”を名乗って活動。作品展に向けて、丹後二俣紙保存会会長で、手漉き和紙を作る田中製紙工業所の田中敏弘さん(63)に和紙を特注。田中さんは原材料のコウゾに、繊維の細かいミツマタを加えるなど試行錯誤を重ね、インクがにじまない和紙が完成した。
山口さんが実際に出会った全盲の少女や顔にあざのある友人、養護施設で暮らす子どもらのことを題材とした歌に、虹、波、桜などに焦点を当てた風景写真が重ねられており、合作の多くは、山口さんの歌に片岡さんが情景を呼応させるような写真を添えた。
山口さんは「来てくださった方が、ご自身の思いを私の短歌や片岡さんの写真に重ねてくだされば、これ以上の喜びはありません。二人展を通して、夢の持つ素晴らしさを感じてもらいたい」と語る。
片岡さんは「一般的な和紙の写真作品とは異なり、特殊な方法で作られた和紙に印刷しているので、そのあたりも見どころのひとつです。障害者と健常者、恩師と教え子のコラボは珍しいと思いますので、ぜひお越しいただけたら」と呼びかけている。
作品展のタイトルは「歌人山口秀樹×写心作家片岡司 二人展」。丹後二俣紙保存会主催、両丹日日新聞社など後援。期間中の土曜、日曜、祝日の午前10時から午後4時まで開館している。入館料は大人200円、高校生150円、小中学生110円。
29日午後1時からは、会場で2人によるトークライブが開かれる。入館料はいるが、参加は無料。
また26日午後1時から4時まで、27、29両日と5月5日の午前10時から午後3時までは、片岡さんが会場で来場者の質問などに答える。
写真上(クリックで拡大)=片岡さん(左)と山口さん
写真下(クリックで拡大)=2人の再会を喜ぶ歌と風景写真