復活した花火大会モチーフに―古里の幼い頃の思い込め、作った卒業制作のゲームが最高賞に 福知山出身の足立健さん
2025年03月17日 のニュース
大阪市の専門学校・HAL大阪の卒業制作発表会「未来創造展」で、昨夏に11年ぶりに復活した京都府福知山の花火大会をモチーフにした3Dアクションゲームが最高賞を受けた。制作したのは、福知山市野家出身でゲーム制作コース4年生の足立健さん(22)がリーダーを務めるチームで、幼い頃の楽しかった記憶が残る古里の花火大会への思いを作品に込めた。
足立さんは、ゲームやものづくりが好きで、府立工業高校2年生のときに初めてゲームを作り、その世界に魅了され、プログラマーをめざしてHAL大阪に進学。これから実際に働く上で経験しておきたいと、学生生活の集大成となる卒業制作では、初めてチームリーダーに挑戦した。
実行委に共感し題材に決定
当初は、ハムスターが単純に突進するだけのゲームだったが、「子どもの大好き」をコンセプトに企画を練り上げる中で、2013年の露店爆発事故以来11年ぶりに開催された由良川河川敷での大規模な花火大会に注目した。
「親戚や市外に出ている出身者らが花火を通じて再会し、つながる場を作りたい」という大会主催者の福知山HANABI実行委員会の思いと、かつての花火大会の日には親戚が集まって遊んだ楽しい思い出が忘れられずにいた自身の気持ちとが合致。ゲームの題材にしたいと、実行委員会に協力を願い出たところ快諾を得た。
誰でも遊べるよう 快適な操作を追求
チームは昨年8月に始動。作業はメンバー10人で役割分担し、ゲームが苦手な人や子どもでも簡単に楽しく遊べるように、プロの開発資料を参考にして制作。可愛らしい世界観を重視しながら、特殊な処理を駆使して快適な操作性を追求した。音響は、ミュージック学科の学生の協力を得て作った。
足立さんは、ディレクターとプログラマーを兼任し、さらにスケジュール管理や仕様書作成、プロモーションビデオまで担当。充実しながらも忙殺される日々を乗り越えて、昨年12月にゲームをほぼ仕上げた。
全13ステージ 福知山城コースも
ゲーム名は「パチっとヒパチー かけだせ! パチパチときめき花火大会!」。主人公のハムスターのヒパチーを操作し、突進しながらステージ上に散らばる花火の種を集めてゴールをめざし、クリアすると最後に花火が打ち上がるというもの。
山、おもちゃの島、海峡など全13ステージがあり、その中に、実行委員会とのコラボステージがある。足立さんは11年ぶりの花火大会を福知山城付近のゆらのガーデンから観覧。その際の風景をゲーム内で再現しようと、ネット地図で確認しながら、福知山城天守閣に向かって、昇龍橋を渡り、登城坂を上って本丸広場へ進むコースにした。
プロレベルと高い評価得る
未来創造展は、最終学年の学生たちがIT、CG、ゲームなどの分野で作品を制作し、来場者に楽しんでもらうイベント。今年は1月19日に大阪市中央体育館で催され、各学科から53作品が出展された。学内審査や本番前日の審査で、学生たちがプレゼンを行い、講師や外部のプロなどが実際に試遊したりして受賞作品を選んだ。
足立さんのチームの作品は、誰でも遊びやすい設計と細部まで作り込まれた完成度がプロレベルだと高評価を受け、全作品中1位にあたるHAL大賞に加え、後援企業によるサイバーエージェント賞をダブル受賞した。
1年次の担任や卒業制作の指導教員を務めた檜山晃作さん(46)は「足立君は、根が真面目でとことんまで追求する学生。ただ前に立って誰かを引っ張っていくというタイプではありませんでしたが、今回はメンバーに配慮しながら、ゲーム全体の質や完成に向けた判断、決断を行っていて、本当に成長したなと感心しています」と目を細める。
足立さんはチームメンバーや講師陣、実行委員会などへ感謝をしつつ、「福知山の花火大会は、大人になっても忘れられない楽しかった思い出。そんな思い出に残るような『子どもの大好き』を集めたゲームをチームのみんなで作ることができました。チーム全員でつかんだ1位が何よりもうれしい」と受賞を喜ぶ。
4月からは大手ゲーム会社に入社し、プログラマーとして新たな一歩を踏み出す。「これからはゲームクリエイターとして、思い出に残るような面白いゲームを世界中のプレーヤーにお届けできるよう頑張っていきたい」と力を込める。
写真上(クリックで拡大)=花火大会をモチーフにゲームを制作した足立さん
写真下(クリックで拡大)=実行委員会とコラボしたステージ。福知山城の横に花火が打ち上がる