悲運のディーゼル機関車「DD54」の特集冊子発売 市内の旧国鉄マン3人証言
2025年01月25日 のニュース
旧国鉄時代に京都府福知山市内の福知山機関区を中心に配備されたが、故障やトラブルが頻発したため、短期間で運用されなくなった悲運のディーゼル機関車「DD54」を特集した季刊誌「ジェイ・トレインVol96」(冬号)がこのほど発売された。当時の写真とともに、歴史や性能などを詳しく紹介し、運転や点検に関わった市内在住の旧国鉄マン3人の証言も掲載。DD54の全容が分かる貴重な資料となっている。
鉄道、航空、ミリタリー、レスキュー関連の出版物を出しているイカロス出版株式会社(東京都千代田区)が発行。今回冊子の全164㌻の半分ほどを割いてDD54をあらゆる角度から紹介している。
DD54は、車体の軽量化と保守・製造コストの削減を目的に、三菱重工業が旧西ドイツの会社からエンジンと変速機のライセンス供与を受けて開発した。
1966年から71年までに40両が量産され、山陰線などを走ったが、変速機から車輪に動力を伝える推進軸の破損による事故が続発。走行中に軸が脱落し、地面に刺さって車体が持ち上がり、脱線、転覆する大事故も起きるなどしたため、十分な活躍ができないままに廃車。洗練された外観などで人気を博しながら、短命に終わった。
特集では、関係者からの聞き取りや残された資料などを基に、DD54が誕生するきっかけや性能、形状などを詳しく解説している。
エンジンの構造も取扱説明書を参考に、各部品、装置の仕組みを説明。異常時の対策をまとめたマニュアルの内容も載せている。また過去に起きた事故の状況や不具合の原因も紹介する。
元検査係、機関士たちが思い出語る
インタビュー記事では、同機関区に所属し、DD54を検査、修理していた大地洋次郎さん(83)=厚中問屋町=と、元機関士でのちに検査にも携わった塩見充男さん(83)=西小谷ケ丘=、元機関士の松田修一さん(85)=上新町=の3人が証言。当時の保守、整備や運転環境、トラブル時の対応、DD54に対する思いなどを語っている。
走行中や福知山機関区で休む姿を捉えた写真も多数掲載。大地さんや塩見さんが持っていた写真も使われている。
3人とも本の出来に大満足。「特集といってもせいぜい5㌻ほどのものだと思っていたが、完成した本を見てページ数の多さにびっくりしました。DD54のことを詳細に調べて載せた本は無いのでは」と驚く。
大地さんは「DD54や福知山機関区について取り上げてもらえたことで、自分たちがやってきたことが認められたように感じました」と言う。
塩見さんは「ここまでよく調べ上げてもらい大変ありがたい。DD54について知らなかった情報もこの本で知ることができました」と喜ぶ。
松田さんは「短命に終わったディーゼル機関車の記録をこのような形で残していただき、大変感謝しています」と話している。
本はA4変形判。定価1980円(税込み)。
写真上(クリックで拡大)=証言した旧福知山機関区の元機関士の塩見さん(左)、松田さん(右)と検査、修理を担当していた大地さん
写真下(クリックで拡大)=DD54の特集を載せた「ジェイ・トレイン」