前向きに人生終える準備―広がる終活 市社協で人気の講座に

2022年10月27日 のニュース

 妻に先立たれて3年、一人暮らしをする京都府福知山市石原の男性(73)は、自身の生前遺影を写真館で撮った。最後まで自分らしく生きて人生を終えるために準備をする終活(老いじたく)の一ページ。「やってみたら、なんとなくだけど落ち着いたかな」。男性は笑って話す。

 社会の少子高齢化、人生100年時代の到来で終活が広がりつつある。市社会福祉協議会が2015年から毎年続ける、老後や死後の準備について学ぶ市民講座「老いじたくカレッジ」は、他の講座と比べて不動の人気を誇る。

 今年度は10月~11月に4回通しで、介護保険、相続、健康な体づくり、薬の正しい使い方を学ぶ内容。9月21日に先着30人を募集すると即日埋まったが、翌日以降も申し込みの電話が鳴り続いた。

 受講者は毎年70代が多い。当初はほぼ女性だったが、年々男性の割合が増え、今年度は参加者全体の3分の1を占めた。

 今年度の第1回講座が10月14日に内記二丁目の市総合福祉会館であった。どんな理由で終活に関心を持ったのかを受講者に聞いてみた。

■子どもに迷惑がかからないように■

 初受講の女性(71)=平野町=は「主人が病気をして、私も年だし、そろそろ時期かなと思うところがあって来ました。介護保険などのことが気になっています」。

 同じく初めて受けた男性(76)=土師宮町=は、昨年けがで2カ月の入院生活を経験したことがきっかけ。「打ち所が悪かったら死んでいたと主治医に言われて、人生の整理は必要と思った。終活をしておいたら子どもに迷惑がかからないし」とうなずく。

 昨年に引き続き受講した女性(86)=北小谷ケ丘=は、毎日歩いて健康には自信がある。終活はまだ考えていないが、「いよいよとなった時にエンディングノート(※)を書くことになるのかな。勉強になるので今年も受講しました」と語る。

 修了者には市社協のエンディングノート「みらいノート」が贈られる。受講には漏れたが、みらいノートのみを購入していく高齢者が今もちらほらといる。

 老いじたくカレッジを担当する市社協職員の高倉千夏さんは「一昔前まで人生の終わりを考えることは、どこかタブー的なところがあったけれど、今はそうじゃない。とらえ方が前向きでみなさん元気なことが、とにかく印象深いです」と目を丸くする。

 自分の遺影を撮り終えた冒頭の男性は、その他の自分の写真を処分した。「だって死んだ後に子どもに整理させるのは、かわいそうじゃない?」

 記者の父も妻を先に亡くし、一人暮らしをする70代。そんな父から生前遺影について相談を受けた。「表情は真面目? 笑ってるのがいい?」「服装は?」。矢継ぎ早に質問する表情はいつも通りで、こちらも「そりゃ笑顔でしょうよ」と軽く応じることができた。

 当事者にも、家族にとっても、明るい気持ちでできる終活が、少し分かった気がする。

 ※エンディングノート=自身の終末期や死後の情報を記し、家族や大切な人に残すためのノート。人生の思い出、自身の葬儀や財産情報、死後に望むことなどをまとめる。法的拘束力はない。

写真=老いじたくカレッジの資料を食い入るように見る受講者

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