「寒いほど良い紙ができる」 かじかむ手を温めながらの寒漉き
2022年01月12日 のニュース

本格的に寒さが強まる中、京都府福知山市内で唯一、手漉き和紙を作り続ける福知山市大江町二俣一、田中製紙工業所で、厳寒期に行われる「寒漉き」作業が始まっている。身を切る冷たさの中、1枚ずつ丁寧に仕上げている。
田中製紙では、江戸時代から丹後和紙(丹後二俣紙)の製造を続けている。冬の低温の時期は、漉きぶね(水槽)の水に雑菌が繁殖しにくいうえに、原料のコウゾの繊維を分散させる役目があるトロロアオイの粘液の粘りが長持ちし、良質の紙ができるといわれている。
寒漉き作業は田中製紙5代目で代表を務める田中敏弘さん(60)が、年明けの3日から取り組んでいる。
冷たい井戸の水を張った漉きぶねの中に、コウゾの繊維とトロロアオイの粘液を入れ、台にすだれを乗せた道具・簾桁に液をすくって漉く。
今は書道用の条幅紙を製造。簾桁を手際よく揺らし、水を切っていく。身を切るような寒さの中、かじかむ手を湯で温めながら、作業に励んでいる。
田中さんは「手が冷たくて作業は大変ですが、寒いほど良い紙ができるので、安心して仕事ができます」と話している。
写真=リズミカルに簾桁を動かし、和紙を漉く田中さん