黒豆がアートに 篠山愛が生み出すガラス

さまざまな色合いがそろう黒豆硝子

ガラス工房るん

秋の丹波といえば栗、松茸と黒豆の枝豆。食べて美味しい食材が、ガラスと出会ってアートになった。

丹波篠山市のガラス工房るんでは、自分たちで黒豆を栽培してガラスに使い、魅惑的な色合いを引き出す「黒豆硝子」を生み出した。

自然の中で制作をと移住

 神奈川県で修行した宮崎英彦さん、恵巳さん夫婦が、「自然豊かなところで制作がしたい」と移住先を探し、古い歴史と現在(いま)が同居し、田園風景が広がる篠山の地を選んだ。

 2008年に移住して工房を構えたところ、篠山の人たちの篠山愛にも感化され、たちまち自分たちも篠山好きに。何か地元に貢献したいと考えるようになり、特産品を融合した作品を創り出すことで、篠山の地名を全国の人に知ってもらおうと意識しだした。

 「自分たちでも栽培しやすい特産品は何でしょうか」。周囲の人たちに相談すると、黒豆を勧められた。農地を貸してもらって、植え方から指導もしてもらって。たくさんの協力を得て2013年に黒豆栽培が始まった。その後、試行錯誤を重ねて黒豆を発色剤にした色ガラス「黒豆硝子」を完成させたのが2018年。移住10年目のことだった。

 篠山思いで、親切で。「黒豆硝子は、そんなみなさんの人柄で出来上がったガラスなんです」と夫婦は話す。

自分たちで育てた黒豆を使って独自の色を創り出している

育てた黒豆を使って一期一会の色を出す

 育てた黒豆を秋に収穫。莢(さや)、豆、枝、葉など、根っこ以外の全部を燃やして灰にして、ガラスの原料に混ぜて高温で溶かし、吹き竿で吹きながら形を整え、作品にしていく。混ぜる灰の量(比率)でガラスの色が変わり、浅葱(あさぎ)、翡翠(ひすい)、黄金(こがね)、琥珀(こはく)色にできる。いずれもレトロ感ある魅力的な天然色。手にした人をやさしい気持ちにさせる。

 ただ、自然の作物を使うとあって、その年、その年の豆によって微妙に色が違う。年によって出しにくい色もある。作家としては、なかなか安定せず狙った通りの色が出せないことは大きな悩みでもある。「もう黒豆硝子はやめよう」というところまで話し合ったこともあった。それでも続けて来られたのは、「その年、その年の色が選べて楽しい」と喜んでくれるお客さんたちの声があったからだった。

 黒豆栽培を応援してくれた地元の人たち。年ごとの色彩の違いを「一期一会の黒豆硝子」として楽しんでくれるお客さんたち。それを受けとめ、いい作品を届けたいと励む作家。いろんな人たちの思いが、黒豆硝子の色を味わい深くしていく。

こぼれ種

ガラスの溶解炉は1100度を超える。工房の中は熱気でいっぱい
全身から汗を流しながら作品を作っていく
二人が息ピッタリに作品を生み出していく
ワイングラスなら1点作るのに30分かかるという。集中力を切らさずデリケートな作業が続く
工房の名前の「るん」はタイ語で虹のこと。元々カラフルな虹色の作品を得意としていて、いまも多く作っている
工房併設のギャラリー

 各地の百貨店に出展しているほか、自工房のギャラリーでも、黒豆収穫期に合わせて個展を開く。今年は10月8日(土)を皮切りに月末までの土日祝日に開催する。

丹波篠山市西谷1-5   ℡079-506-1380
(制作に集中している時など電話に出られない場合がある)

2022年9月3日更新

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