個性が香る 秋のそばめぐり

 夏に種をまいて秋に収穫する「秋そば」の季節がやって来ました。
 タウンタウンエリアにはたくさんのそば屋がありますが、今回はその中から、珍しい蒸しそば、素朴な地そば、そば街道を訪ねてみました。

【綾部市】    そば 四百年家

江戸時代から食されてきた 蒸しそば

 蒸しそばとは文字通り蒸したそばのこと。その歴史は古く、江戸時代から食べられていたという。当時のそばは、ゆでると切れやすいので蒸したというが、「そば屋で一杯」といえば肴(さかな)は蒸しそばと、日本酒には蒸しそばが合ったのだという。

 綾部市の市街地から車で約20分、府道1号沿いに蒸しそばを食べさせてくれる店「四百年家」がある。自らを「そば人」と呼ぶ店主の猪俣武司さん(63歳)は、それまで勤めていた会社を51歳で早期退職し、そば打ちを始めた。札幌の名店で修業を積み、開店までの間、様々なそば屋を食べ歩く中で出あったのが蒸しそばだったという。

【写真】ここではそば湯は最初に出てくる。1杯目は喉を潤すお茶代わり、2杯目はそばを食べ終えて残ったつゆに入れて、3杯目は口直しのお茶代わりに飲む

 「最初はおいしいとは思いませんでしたが、食べ歩くうちに理由は分かりませんが、うまいに変わった」という。出店場所を探す中で縁あって今の場所に来た。店名は、この家が江戸時代の慶安年間(1648~52年)に建てられ、およそ400年続いていることから「そば 四百年家」としたという。

 名物の「セイロ蒸しそば」は、北海道産のそば粉を石臼で自家製粉し、つなぎ2、そば粉8の割合で手打ちした麺を使う。それをゆでた後、サッと水にくぐらせぬめりをとり、さらにサワラ材のオリジナルのセイロで蒸し上げる、挽きたて、打ちたて、ゆでたて、蒸したてで提供している。ゆでるまでは普通のそばと変わらないが、その後の蒸し時間の加減が難しい。

 【写真】店主の猪俣さん

 つゆは、節から削った鰹、宗田鰹、ほんの少しの鯖で取っただしに、しょうゆ・みりん・砂糖で作ったかえしを合わせて作る。「丁寧な作業を心がけ、『これぐらいでいいやろ』でなく、『もう少し』念押しするようにしています」と猪俣さんは話す。

【写真】部屋は10畳(手前)と8畳と広く、天井も高い。400年続く古民家はそうそうあるものではない 

そば本来の甘み、香り、もちもち感を味わう。そのあと薬味を入れて楽しむ。ゆっくり味わって食べたいところだが、湯気がなくなると少し固まるかも知れないので、湯気があるうちに〝ズズズズッ〟と大きな音を立て一気に食べるのが理想。献立は、セイロ蒸しそばとざるそばのみ。

 各1200円。合わせて20食が売り切れ次第閉店する。

綾部市八津合町神谷9 TEL0773-21-1746
(営)11:00~14:00 ※売り切れ次第終了
月曜休(祝日の場合は火曜休)

【京丹後市】 そば処 歌仙

小野小町の里のこだわりの 地そば

【写真】地そばに地元の野菜の天ぷらなどが付いた天ぷらセット

平安時代の六歌仙の一人で、絶世の美女であったという小野小町が晩年を過ごした京丹後市大宮町五十河(いかが)。その墓の周辺を整備して設けられたのが小町公園だ。「そば処歌仙」はその横にある。長年、そば屋として営業していたが、ここ3、4年は空き家になっていた。それを地元五十河区が引き継ぎ、運営委員長の田上英明さんをはじめスタッフが知恵と力を出し合い、準備期間を経て2015年7月に食事処としてオープン、翌年12月からそば一本で営業している。

【写真】風情ある古民家。天橋立から岩滝を通って府道655号で向かう。ずいぶん便利になった

 そば処歌仙のこだわりは、ブナ林が広がる豊かな自然の中で育まれてきたそばや野菜など、食材は出来るだけ地元産を使うこと。しかも、そばはつなぎなしの十割そば。製粉には昔の粉砕機を利用しているため、どうしても殻が残り田舎そばのようになるが、当地では昔から家々で「地そば」を打ってきた暮らしがあり、本物の味わいが楽しめると評判だ。

 このほど新しくなった献立は、ざるそば800円~、天ぷらセット1200円・1400円、麦とろセット1400円・1600円(いずれも税込)など。「山あいの素朴な味わいを多くの人に味わっていただきたい」と田上さん。11月末~3月には、これもまた名物の手作りこんにゃくも販売する。

京丹後市大宮町五十河302 小町公園横
TEL0772-68-1105
日曜日11:00~15:00※そばの提供は11:30~13:30(L.O.)(予約は、営業日の9:30~15:00)

【丹波市】 奥丹波 そば街道 

 丹波市にはそば屋が多い。どの店も正真正銘の手打ちそばだが、それぞれに個性派そろいである。お互いにライバルでありながら、春先には「奥丹波そば街道」と銘打ったイベントを一緒に行うなど、そばを通した地域おこしに余念がない。人気店をいくつか紹介しよう。

【写真】市島町・そばんちのそば三昧

予約不要のランチセットやいろんなそばが味わえるそば膳が人気の「そばんち」(市島町梶原125TEL0795‐86‐7446)▽季節の野菜パウダーを練り込んだ変わりそばや温かいそばがおすすめの「丹波の蕎麦処 たかはし」(春日町平松526 TEL0795‐78‐9151)

【写真】青垣町・三津屋妹尾の相乗りさば寿司セット

▽築120年余りの古民家で味わう相乗りさば寿司セットは十割と二八そばが楽しめる「三津屋妹尾」(青垣町田井縄640 TEL0795‐87‐2550)▽鯖寿司や鴨汁つけ麺が好評の「蕎麦処大名草庵」(青垣町大名草1003 TEL0795‐87‐5205)。

【写真】山南町・木琴の野趣溢れる盛りそば

 ほかには、そばんちの亭主が始めた「本格手打ちそば木琴」(山南町南中115‐6 TEL070‐2300-1156)▽「そば処 鴨の庄」(市島町北奥997 TEL0795‐85‐0234)▽「そば処 今出せせらぎ園」(青垣町遠坂1625 TEL0795‐88‐0558)▽「道の駅 あおがき」(青垣町西芦田541 TEL0795‐87‐2300)などでも味わえる。

 これだけそばがあれば、自分好みのそばを見つけることもできるだろう。晩秋には紅葉狩りと合わせて訪ねてみてはいかがだろう。営業時間、店休日など詳細は各店に問い合わせを。

2019年10月12日号掲載

お得なクーポン情報はこちら!

著作権について

このホームページに使用している記事、写真、図版はすべてタウンタウン編集室、もしくは情報提供者が著作権を有しています。
全部または一部を原文もしくは加工して利用される場合は、商用、非商用の別、また媒体を問わず、必ず事前にタウンタウン編集室へご連絡下さい。