FMラジオ歴史ウォーク
伝説の大江山 神の里から鬼の山へ4 日本の鬼の交流博物館館長 村上政市

天の岩戸
 稲荷からバスで約10分下ると府道にもどる。そこから数分、ほとんど直角に近いカーブのあるところでバスを降り、天の岩戸への旧道を歩きます。道端に「元大神宮 天の岩戸」と記した古い石の道標があります。このあたり、マイノといいます。真井野と書かれていますが、昔、舞堂があったので舞野と呼んだという話に説得力を感じます。

 しばらく歩くと、「真名井」と呼ばれる古い井戸があります。水は涸れてありません。立て札には、丹後の天女の降り立った真名井が池のような説明がしてありますが、地元の岩戸神社伝承では、大昔、元伊勢内宮のご神鏡を鋳造した時、水を汲んだ井戸だと伝えています。

 しばらく歩くと、今も稼働している内宮発電所の貯水池があります。ここを通りすぎてカーブを曲がると天の岩戸です。何となく霊気のようなものを感ずる別天地です。晩秋になると紅葉が実に美しいところです。

 私が説明するより、江戸中期、ここを旅した俳人、加賀千代の旅日記の一節をかりて紹介しましょう(現代かなづかいに改変)。

 「此山大木数多有れども大昔より一本も杣入れず 産湯の釜 産だらいという岩あり 此岩何程湛水しても水増さず 百日の旱りにても一合も水干ることなし。
 岩橋やわれ涼しくはぬるません」

日浦ケ嶽
 今回のラジオウオークでは、表参道でなく天の岩戸側の裏参道から内宮へ向かいます。この裏参道のあたりは、岩戸山原生林で、カシを主体とした常緑広葉樹と落葉広葉樹が入り混じっています。神域とあって、古来から斧を入れることもなく、珍しい植生をとどめ、植物の宝庫で京都府歴史的自然環境地域に指定されています。

 200〜300m歩くと、日浦ケ嶽遥拝所につきます。真っ正面のピラミッド型の山が日浦ケ嶽。古来、内宮の神体山として、一願成就(じょうじゅ)の山として信仰を集めてきました。

 山頂には大きな磐座(いわくら=社のなかった頃の神のよりしろ)と、石を規則的に並べた謎の造型物があります。夏至の日、この遥拝所から眺めると、夕陽がとがった山頂に沈みます。神秘の光景です。みなさんも是非、欲張らずに「一願」を祈って下さい。必ず成就することでしょう。

元伊勢内宮
 元伊勢内宮の正式名は皇大神社、祭神は伊勢の内宮と同じアマテラスオオミカミ(天照大神)。社伝によれば、崇神天皇の時、大和笠縫邑から、ここへ天照大神のご神鏡を移し、4年間おまつりした旦波吉佐宮(たにはよさのみや)の跡地と伝えています。正面の鳥居は、日本で2例しかない珍しい黒木(木の皮をつけたまま)の鳥居です。本殿の周りに約80社の境内社があり、古事記に出てくる神様は、すべて揃っているとのことです。

 もともと60年毎の式年遷宮でしたが、明治以降とだえており、現在の本殿は、明治元年(1868)、宮津藩主・本荘氏の寄進になるもの。三間社神明造りです。前庭の神楽殿は文政6年(1823)の建立です。

 近くを流れる川は五十鈴(いすず)川、鎮座する山は宮山。シイを中心とした原生林です。近くに宇治橋もあり、まさにミニ伊勢神宮の観があります。

 平安時代の和名抄に、この内宮のある旧河守上村は、神戸郷(かんべごう=大社に仕え租税を納める人々の村)とありますから、古くから、かなりの社があったのでしょう。すぐ隣の台地、梅ケ平からは縄文時代の石鏃が出土しており、周辺に古墳があることからも、このあたりが古い歴史を持っていることを物語っています。

竜灯杉
 本殿左にある巨木が竜灯杉(りゅうとうのすぎ)で内宮のご神木です。樹齢千年といわれますが、なお青々と緑をつけています。

 節分の夜、この竜灯杉の梢に、竜が灯をともすという伝承が残っていますが、この竜神信仰は海人族(あまぞく)の信仰なのです。それに本殿のすぐ横に独立して三女神社があります。三女とは、これも宗像(むなかた)系海人族の祖神である宗像三女神のことです。境内社の中に浦島神社もありますが、祭神は白土翁とあります。府道沿いの田の中に、港石(みなといし)と呼ばれる巨石があり、これも航海民であった海人族を連想させます。元伊勢には海人族を感じさせるものが非常に多いのです。

 表参道の最上段に麻呂子親王お手植えの杉という巨杉があり、3本あったうちの1本は健在です。この内宮、古くから、麻呂子親王勧請説があったことも付け加えておきます。表参道を下ると、KTRの駅はすぐ近くです。(おわり)


写真:岩戸神社
大江山 鬼伝説 節分と鬼、酒呑童子を語る
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