FMラジオ歴史ウォーク
伝説の大江山 神の里から鬼の山へ1 日本の鬼の交流博物館館長 村上政市

はじめに
 「FMラジオ歴史ウオーク」も回を重ねて13回目。今年は大江山へ足を延ばしていただくことになりました。元伊勢や大江山へは何度も行ったとおっしゃる方が多いと思いますが、今回の集合地であるKTR大江山口内宮駅から、鬼の博物館までの約5kmの道すじには実に多くの知られざる古蹟がひそんでいます。

 今回は、秋の1日、ゆっくり、のんびりと山道を歩きながら、先人たちが、きびしい暮らしの中で、神に祈り、仏に救いを求め、鬼に畏怖の情を託しながら、絆(きずな)を強めあい、生活のうるおいとした足跡を探ってみましょう。自然と共存しながら、肩を寄せあって生きた人々の声が聞こえてくるかもしれませんよ。今回は歩かない付近の古蹟の紹介も兼ねながら、コースに従って紙上で概略を述べてみます。

熊坂峠
 KTR大江山口内宮駅から、毛原(けわら)の集落入り口まで約1・5km。府道9号のなだらかな坂道が続きます。この峠が熊坂峠です。こんな名前がついているのは、昔から毛原の棚田熊の出没するところだったのでしょうか。数年前の薄暮、この府道をノシノシと熊が歩いていて話題となったことがありました。私も朝夕の通勤途上、小動物が道を横切るのをよく見かけます。「けものみち」を人間さまが道路をつけて遮断してしまったのでしょう。

 大江山連峰は、ツキノワグマをはじめ、シカ、イノシシ、タヌキ、キツネ、サルなど野生動物の多いところで、禁猟区になっています。しかし、最近のイノシシの被害は、目に余るものがあります。

 酒呑童子の物語本を読んでいると、酒呑童子の家来の鬼に、熊童子、星熊童子、虎熊童子、金熊童子など、熊のつく鬼が多いのが目立ちます。やはり、大江山には大昔から熊がいたのでしょうか。

棚田の里、毛原
 最近できた雪よけトンネルをくぐりぬけると、前面の谷あいに平地が広がります。毛原の集落です。昔から棚田が多く、近年「日本の棚田100選」にも選ばれました。「OZ(オズ)」という結婚式場を備えたイタリアンレストランも出来て、大江山の観光ポイントの一つになりました。

 府道から少し入った旧道の道端に、そう大きくない自然石があり、「右ふけん 左なりあい」と彫りこんだ素朴な道標が残っています。「ふけん」は普賢で、現在の大江山スキー場下の「寺屋敷」(宮津市小田)にあった普甲寺のことで、本尊が普賢菩薩だったことから、その寺を「ふけん」と呼んでいたのでしょう。

 戦国時代、若狭の武田氏と丹後の一色氏の戦場となり焼失しましたが、平安時代、棄世上人によって開山された大寺で、北の高野山とまで言われた古刹でした。今昔物語の中に、この元普甲道のことが出ています。この毛原は、古い時代、その元普甲道の入り口の村だったのです。明治時代まで、大きな旅籠(はたご=旅館)があったと伝えています。

元不(普)甲道
 今回は元普甲道は歩きませんが、おもしろいところなので少し説明します。この道、歩きませんというより歩けません。廃道になって久しく、笹が背丈以上に茂っていますが、ところどころ見事な石畳が残っています。

 この毛原から毛原峠を越えて栃葉(舞鶴市大俣)へ入り、辛皮(からかわ=宮津市)を経て普甲寺のあった寺屋敷を通り、普甲峠越えで宮津へ向かう道でした。

 毛原峠の頂上には、首と胴を切られてバラバラになったお地蔵さんが祀(まつ)られています。昔、剣豪の岩見重太郎が橋立で親の仇討ちをしての帰途、ここで待ち伏せられて返り討ちになりそうになった時、このお地蔵さんが身代わりになって助かったということで、このお地蔵さんを「袈裟斬り(けさきり)地蔵」と呼ぶようになったということです。

 普甲峠は大江山スキー場のあるところですが、昔、ここに不甲神社(延喜式内社)があって、その祭神を「天吹男命(あまのふくおのみこと)」と言ったので、この峠を「吹男越え(ふくおごえ)」と呼んだことに始まると伝えています。

如来院
 府道9号の大きなS字状の急坂が終わるあたり、左手に古刹、如来院(にょらいいん)が望めます。今回は参詣する時間的な余裕がありませんが、麻呂子親王が鬼退治をしたあと、鬼たちの菩提を弔い、護持仏を納めて開基したと伝え、その由来を記した「佛性寺縁起」が残っています。奥付の部分が後年改編されており、成立年代がわかりませんが、漢文体であり、その内容からみて、この地方に残る麻呂子親王伝説を記す寺社の縁起書の中では、最も古いものではないかと思われます。

 山号を鎌鞭山(かまむちざん)といいますが、麻呂子親王が護持仏と共に、兵法の鎌を納めたことに由来すると言われます。本尊の胎内仏は秘仏で、鉄製の薬師如来座像という珍しいものです。また完形の懸仏六面(その1つに応永10年=1403年=の銘)が残され、京都府の登録文化財に指定される優品です。その中に蔵王権現像を刻むものがあり、修験道とのかかわりを持った時期があったのではないかとも言われています。

写真:毛原集落の入り口から見た棚田(桜井一好さん撮影)
大江山 鬼伝説 節分と鬼、酒呑童子を語る
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