いくつになっても 野球はやっぱり面白い

還暦野球の「福知山倶楽部」
 ボールを追いかける目は少年野球の児童たちと同じように輝いている。野球が好きでたまらない。体に少しガタがきてもみんなと一緒にやれる喜びを分かち合う。軟式の還暦野球「福知山倶楽部」(福間誠一代表)が2月に結成された。無理せず、楽しく−をモットーにグラウンドを駆けるメンバーたち。練習や試合を通じて生涯スポーツの見本となっている。

「無理せず楽しく」モットーに

 年をとっても軟式野球を楽しもうと、市野球協会が還暦を迎えた人たちでのチームづくりを計画。昨年11月にメンバー募集を始めた。還暦と銘打っているが、59歳からを対象とした。その呼

福知山倶楽部のメンバー
びかけにこたえて38人が集まり、2月10日に結成式をして活動がスタートした。
 メンバーの顔ぶれは、現在もシニアのチームで活躍している人や学生時代の経験者ら様々。栗原征治さん(62)は新聞の募集記事を見てすぐに「入りたい」と思い、一番に申し込みをした。中学、高校時代に野球をしていたが、卒業後はほとんどボールを握る機会がなく、60歳を過ぎたら再び野球をやろうと決めていた。3月末で勤めていた会社を退職。久しぶりに野球が出来ることを本当に喜んでいる。
 還暦野球はバッテリー間、塁間とも社会人野球より短く、ボールも中学生と同じサイズのものを使う。練習は毎週水曜日と第1、3土曜日に、由良川河川敷グラウンド、長田野グラウンドのほか、福知山球場も使う。キャッチボール、ランニングなど、けがをしないように、十分体をほぐすことから始まる。このあとノックでメンバーたちは各ポジションに散り、打球を受ける。


甲子園経験者も

 メンバーの中にはすごい球歴の持ち主もいる。曽根国義さん(61)は鳥取西高校時代、第40回全国高校野球選手権に捕手として出場した。1回戦で新潟商業と対戦。1−1の9回裏にサヨナラヒットを打ち、チームを勝利へ導いた。曽根さんは毎日ボールを持っていないと落ちつかないというほどの野球好き。シニアのチームでも楽しんでいるが、「福知山倶楽部ではより楽しく野球が出来る」と話す。 
笑みを絶やさず 最年長は75歳

練習中は、打つ時も守る時も走る時も、常に声を掛け合う。体力が落ちていることは否定できないが、みんな懸命になってボールを追いかける。息があがり、足がつってしまうこともある。しかしメンバーの顔からは笑みが絶えない。みんな野球の楽しさを体いっぱいで感じ取っている。
 チームの平均年齢は62歳。最年長は瀧野敏雄さん(75)。1946年から4年間、軟式野球チームのオール八鹿に所属し活躍した。「野球が好きで、球拾いでもいいからと思い参加しました」と瀧野さん。体は丈夫なほうで、10年ほど前にはトライアスロン大会にも出場した。グラウンドへはいつも自転車でやって来る。打撃はバットを短く持ち、こつこつとあてるタイプで、他の選手の見本になっている。「足がだめでね。64、5歳のころだったら自信があったん
だけど。これから足を鍛えなければ…」と意気込む。
 クラブの代表兼監督でチームをまとめる福間さん(61)は、グラウンドではひときわ大きな声で選手たちにげきを飛ばす。よいプレーが出た時は「ナイスプレー」と褒めたたえる。「ボールをビール瓶だと思って」。冗談も選手たちを活気づける特効薬となっている。
 練習への参加は決して強制しない。仕事を持っているメンバーもいて、仕事の合間に練習場を通り、時間があいていると、球拾いなどを買って出る姿が見られる。
 左腕の調子が悪く、現在グローブを付けるのもままならない寺田重久さん(66)は「練習や試合が出来なくても絶対に籍は置いていてほしい」と切望。最近少しずつ調子が戻り、練習にも参加出来るようになった。「みんなうまくなって、自分もやりたくてうずうずしますが、見ている

チーム最年長の瀧野さん。バッティングは他のメンバーの見本に
だけでも楽しい。腕の調子もよくなっているので、早くグラウンドに立ちたい」と願っている。
 練習にはメンバー以外の人も参加。宮垣守吉さん(54)はバッティングピッチャーをして、戦力アップに貢献している。「クラブの中に知り合いがいるので、役に立てばと投げさせていただいている。クラブ内はみんな言いたいことを言い合い、ざっくばらんで良い雰囲気。わたしも5年後はぜひ入らせてほしい」と話す。

記念の1勝は強豪チームから

 クラブ内で練習試合はよくしているが、対外試合はまだ数えるほど。初の対戦相手は日新中学校野球部だった。6月2日に同市長田野グラウンドで対戦。クラブのメンバーたちにとって日新の生徒は孫の年代に近く、年齢差は相当離れていたが、両チームとも力いっぱい戦った。結果1−8の大差で敗れたが、ランニング本塁打で奪った1点はクラブの記念すべき初得点となり、メンバーたちは大喜び。同10日には園部町内で京都市内の還暦野球チーム・京都シニアスターズと対戦し、第1試合は2−8で敗れたものの、第2試合は8−4で対外試合初の勝利を飾った。
 京都シニアスターズは60−63歳の人たちで構成するチーム。福知山倶楽部は強豪チームに勝ったことで、大きな自信につながった。また7月には福知山西南ロータリークラブと戦い16−12で勝利。試合にはいつも全員が出られるよう、打順や守備を考える。これまでの対外試合でも全員出場を心掛け、チーム一丸となって戦ってきた。

フィールディングも軽やかに守備をこなす選手たち
 すでに京都市や舞鶴市、峰山町などのチームが所属する京都還暦軟式野球連盟に登録しており、12月には全国還暦野球連盟にも入る予定で、今後、公式戦を重ね力をつけていく。
 主将の川西史明さん(60)は「みんな体力的にも精神的にも若返り、心身の健康に努めていきたい。また野球を通じてスリリングなドラマを味わいたいですね」。福間代表は「楽しく野球をして仲間づくりをすることも大切ですが、競技ですから、勝つことも大きな目標として掲げています。もちろん野球の楽しさは忘れないようにしていきたい。70歳、80歳になっても体が続く限り頑張りたいですね」と意欲的。
 スポーツの世界では「引退」はつきものだが、福知山倶楽部では、自分がやめたいと言わない限り、退会はない。全員が生涯「現役」をめざす。

連載・企画目次へ 両丹日日新聞WEB両丹表紙へ