ITは地域活性化に役立つか 全国の事例からアプローチを探る

いつでも どこでも ユビキタス時代がやって来る

 ITの世界で近年盛んに使われている言葉に「ユビキタス」がある。「いつでもどこでも」を表すラテン語で、ほしい情報をいつでも、どこにいても取り出せる社会にしようというのが、いまの流れ。その一つの形が携帯電話だと、京都造形芸術大学の竹村真一教授はいう。

キーワードは情報格差是正
尾道「どこでも博物館」
携帯電話が情報端末に

いまいる場所の話題を携帯電話で提供 尾道市

 携帯電話は通話をするだけでなく、メールのやりとりや簡単なホームページを見ることができ、GPSを利用して地図上で自分の位置を知ることもできる。
 
 竹村教授は、この携帯電話を使った観光案内サービスを、広島県尾道市で一昨年4月に開設した。市商工会議所から委託を受けて制作。現在は市が運営を引き継いでいる。

 ホームページを使った観光案内は全国無数にあるが、いずれも出発前に調べたり予約を入れたりする仕組みなのに対し「尾道観光ナビ・どこでも博物館」は、現地で自分がいま立っている場所の隠れた情報を知ることができる作りにしてある。

志賀直哉になりきり坂道歩く−地元の人の生の声も紹介

 尾道は細く急な坂道が多いまち。いくつもの坂道にいくつもの物語がある。有名な坂もあれば、地元の人しか知らない坂も。そんな坂のそここ「尾道観光ナビ・どこでも博物館」目印のフクロウ。大林映画「転校生」の舞台「御袖天満宮」の石段にもあるこに、石でできたフクロウのモニュメントが置いてある。フクロウには1体ずつ番号が記してあり、携帯電話で観光ナビのホームページに入力すると、その場所にまつわる様々な情報が表示される。

 「暗夜行路」に出てくる坂道では、志賀直哉が迷いながらたどったのと同じようにして坂を上る気分が味わえる。島を結ぶ渡し船の乗船口では、昔の様子を地元の人が紹介していたり、普通のガイドブックでは紹介しきれない情報も提供されている。

 「初めての観光客に親切な案内をしようと思えば、そこら中に案内看板を立てなければならず、景観を損ねますが、携帯電話で情報を取り出せば大きな看板は必要ありません」と竹村教授は説明する。
 場所、場所で観光客が感想を投稿できる仕組みにもなっていて「携帯メールで返信するだけなのですが、場所情報を伴っているので、ちょうど現地に置き手紙をしてきたのと同じことが体験できます。そこを訪れたほかの観光客と感想を共有できるんです」ともいう。

 こうして携帯が観光案内をするようになれば、ガイド役は必要なくなるのだろうか。尾道でも、観光ボランティアたちから不安がる声があがった。竹村教授はお年寄りたちにこう答えた。「基本的な観光情報は携帯に任せて、みなさんは自分の体験してきたことや思い出など、自分にしか語れない生の尾道を案内してあげて下さい」

 いま尾道駅前で観光ナビのパンフレットを熱心に配っているのは、観光ボランティアのお年寄りたちだという。携帯を使ったナビの便利さを実感。まちを訪れる若者たちに使い方の手ほどきもしているという。

テレビに「新しい波」−地上デジタル放送

福知山は07年春に民放開始の予定 

 携帯電話と並び、これから注目されるのがデジタル地上波テレビ。これまでのテレビ放送は大きく分けて、アナログの地上波放送と衛星放送の2本立て。それが首都圏、名古屋、大阪圏では一昨年末から地上波のデジタル放送が始まった。今年4月からはNHK京都放送局でデジタル放送が始まる運び。最初は京都市域だけの放送だが、順次エリアを拡大し、福知山がエリアになる日も近い。毎日、朝日、関西、読売の広域民放4局ITコラボレーションの研究会も、2007年の春に福知山での放送を開始する予定。KBS京都は未定。ただ、2011年までで全国のアナログ放送は終了することになっている。

 デジタル放送は「髪の毛1本まで見える」ほど画質が良い。音もCD並み。現行のアナログ波程度の画質でなら、1つのチャンネルで同時に3つの番組を放送することもできる。プロ野球の試合が午後9時以降に延びた場合、今なら後の番組が次々ずれていくが、デジタル放送なら、1つは9時から予定通りにドラマや映画を放送、2つ目は試合の行方がほぼ決まった段階でドラマを放送、3つ目は試合終了・ヒーローインタビューまで野球を放送することも可能だ。

テレビでインターネットも

 番組を放送するだけでなく、電波にいろんなデータを乗せて飛ばすのもデジタルの値打ち。出演者情報など番組と連動した情報のほか、地域ごとのニュースや天気予報などを流すこともできる。双方向性もウリで、テレビの前の視聴者が人気投票や世論調査などに直接参加するタイプの番組が増えそう。しかし双方向性を生かすためにはインターネットを利用することになり、ここでも通信環境の整備が課題となってくる。またデジタルテレビはパソコン同様にインターネットを利用でき、しかも使い方が簡単だとなると、「どこでもだれでも快適にインターネットが利用できる」環境は不可欠のもとなってくる。

「福天の伝達回路統合を」

ITの過渡期を迎え、京都創成大などが提言まとめる

 福知山市の周辺部や三和、夜久野、大江町ではテレビの共同視聴施設を使っている所が多い。デジタル化に伴い、設備を刷新する必要に迫られている。「老朽化した3町の有線放送施設を刷新する時期が迫っていることもあり、この際、福天地方を光ケーブルで結び、テレビもインターネットも1本の線で楽しめるようにしては」。そんな提言をする団体もある。京都創成大学を核に、地元の情報関連企業が参加して組織する福知山ITネットワークコラボレーション協議会(会長・二場邦彦学長)は昨年、NTTやパソコン、家電メーカーなど各方面の専門家を招いて研究会を重ね、秋に提言「福知山情報ネットワーク」をまとめた。

 二場学長はいう。「産業社会から知識社会へ転換する中で、『情報』の重要性はますます高まっています。情報を得やすくするには光などの有線と無線、放送など伝達回路を統合して整備する必要があるでしょう」


写真上:携帯電話が「いつでも、どこでも」を可能にする(表示しているのが「尾道観光ナビ・どこでも博物館」)
写真中:「どこでも博物館」目印のフクロウ。大林映画「転校生」の舞台「御袖天満宮」の石段にもある(尾道市提供)
写真下:二場学長を代表に研究会が重ねられた

参照URL
ささはたドッとこむ http://www.sasahata.com/
宮崎県木城町 http://www.kijo.jp/
徳島県上勝町 いろどり http://www.irodori.co.jp/
尾道観光ナビ・どこでも博物館 http://dokohaku.net/
社団法人地上デジタル放送推進協会 http://www.d-pa.org/
福知山ITネットワークコラボレーション協議会 http://www.fukuchiyama.ne.jp/it/

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