第3回 大江町3

 由良川のはんらんで多くの家屋が浸水した。家財の多くを失い、長い間不自由な生活を強いられた。その苦境から立ち上がり、人々は以前の生活をほぼ取り戻した。「行政だけに頼らず、地域は自分たちで守る」。災害をきっかけに自主防災組織結成の動きが生まれている。

 自主防災の取り組み進む 新町区は水位板を設置

 死者2人、家屋の半壊20世帯、床上・床下浸水30世帯。新町地区は、町内で最も大きな被害に見舞われた地区の一つ。今年5月、池上幸浩区長(41)を中心に自主防災委員を設け、取り組みを進めている。
 区の三役4人と区内7組の組長の計11人で構成する。「大きな災害に遭った教訓を生かし、行政に頼るだけではなく、自分たちでこの地域を、地元の人たちを守っていこう」と結成した。

 台風シーズンを前に9月には、区独自の内水表示板を設置した。台風23号では由良川からあふれた水と内水で一気に水位が上がった。行政から十分な水位情報が届かず、結果的に被害が拡大した。この教訓から表示板を設けた。

 アルミ製で高さ約2・5m。地区で一段低い脇道の一角に立てた。地元で最も低い町道のところを水位0とし、それ以下は青、以上は赤のラインで10cm間隔で目盛りを刻んだ。夜間でも目盛りにライトを当てれば見やすいよう反射板を取り付けた。

 災害時は、逐次その表示板を見て、区長宅と公民館にある放送設備を通じて全戸に水位状況を知らせる。地元の人ならどの程度の水位に達すれば自分の家が危険か分かる。

 このほか、区の48世帯の全居住者リストを作っている。プライバシーに配慮した上で、世帯主と家族全員の名前を記している。防災委員がそれを所持し、災害時に安否や避難・誘導の際の人員確認に使用する。

 その日に親類や知人が訪れていれば、備考欄に書き込む。ぬれないようビニールケースに入れて首から下げる。ライト付ボールペンも一緒に配布している。

地域での自助共助が大切

 区長の池上さん宅は3階建て。昨年の台風では2階まで水が来た。逃げ場を失った近くの2家族が消防団の和舟に乗せられ避難してきた。「あの時は2階でもひざ辺りまで水が上がってきた」と恐怖を語る。

 地域の現状は「多くの家がつかり長く2階で生活されていたが、出来る範囲で修繕され、今はそうした家はないように思います。家の中を乾かすために時間がかかり、この夏にようやく工事をされた家もあったようです」と話す。

 地域に大水害を体験した人が少なくなり、昔と河川の状況も変わっている。今回は、山手に降った雨と由良川からあふれた水とで水位が一気に上がり家々を襲った。

 「今回の悲惨な出来事を忘れず、地元としてこの内水表示板の活用を図りたい。いざというときはいち早く住民の方に伝え、避難するよう指示したい」と池上さん。

 同じように大きな被害を受けた隣の蓼原地区でも、自主防災組織の結成を検討している。町は今回の災害を機に、各地域での組織化を積極的に推進している。

 町総務企画課防災担当係長の井上利導さんは「町職員や消防団員は災害防御に手をとられ、すべてになかなか手が回らない。地域での自助・共助の取り組みが大切になる。子どもや高齢者ら災害弱者と呼ばれる人たちを助けるのは、身近にいる地元の元気な人たちしかいない。日ごろから近所間の付き合いを深めることで、そうした気持ちがより強まる。互いに助け合う取り組みが何よりも大切になっている」と、自主防災の重要性を指摘する。

 被災地のまち並みを歩くと、水につかった跡が建物の側壁や部屋の壁に残るところがある。大人の背丈を軽く超える高さのところに汚れとなって残っている。23号災害の教訓を忘れさせないためであるかのように。


写真上:浸水のために使えなくなった家財が路上にあふれた
写真下:新町区が独自に設置した内水表示板。区長の池上さんが指さすのが水位ゼロの位置

福知山のニュース両丹日日新聞