第5回 福知山2

 「家屋に水が流れ込みそうだ。何とかして」−。住民からのSOSに駆けつけた。土のうは、ない。スコップで地面を掘り、水の流れを変えようと必死だった。”焼け石に水”だったが、豪雨に打たれながら、とにかく手を動かした。
 福知山市消防団三岳分団の西川雅美(45)、足立泰志(43)、石坪博彦(41)の3班長らは、あの日を振り返って「無力さを感じました」と漏らす。

 地域を知る強み生かして 市消防団 教訓踏まえ備える

水害とは無縁のはずだった 三岳分団

 山間部にある同市三岳地区。地域を縫うように走る国道426号は、陥没、土砂崩れなどで通行不能となった。あちこちで車が立ち往生していた。佐々木川は怒り狂ったようにはんらんし、台風のすさまじさを物語っていた。市内の勤務先などから、招集を受けて戻ってきた団員たちは、古里の変わり果てた光景に息を飲む。

 「山に囲まれた地域だから、水害とは無縁だと思っていた。川のはんらん、浸水被害は考えられなかった」。入団32年のベテラン、藤原純一分団長(53)でさえ、そう言う。このときの同分団は団員数63人。冠水による道路寸断などで、地域に戻ってくることができたのは半分以下の29人だった。「団員の力では対処できなかった」と悔やむ。

 もう一度あのような災害が襲いかかるかもしれない。

 藤原分団長は「初めての体験だったので、スムーズな対応は難しかった。災害時には冷静さが必要。こんごは訓練を重ねて体に覚えさせないといけない。住民には早く避難してもらうよう、普段から呼びかけていきたいと思う」と、経験を生かす考えを示す。

 本部長の東一郎さん(48)は「確かに無力さを感じた。しかし、助けなあかん、という気持ちは全員にある。規律訓練などはいざというときの迅速な動きにつながると思っている。地域消防団は地理や住民のことなどを熟知していることが強み。こういったことを生かせるような活動をしていき、頼られる存在になりたい」と意気込む。

地域の救助活動の”要”

 市消防団は水防団を兼ねており、市内に17分団ある。当日は850人以上が、未曾有(みぞう)の大惨事に対して、手探り状態ながらも活動に当たった。家族のことを心配しながら、ある団員は浸水した道路に胸までつかりながら住民に避難を呼びかけ、ある人は孤立住宅で一晩、その家の人たちと一緒に過ごした。人命救助、避難呼びかけ、行方不明者の捜索、土のう積み、交通規制、情報収集、警戒。消防団は間違いなく、地域の救助活動の”要”であった。

 ところが、資器材不足で十分な救援活動ができなかったことは否めない。そこで、市は今年度、消防団に発電投光器、携帯用電話無線機、一部分団には救助用ボートを導入。また、消防団も災害時の手引書にあたる「消防活動基準・消防活動マニュアル」を作成し、いざというときに備えている。

 台風が過ぎ去ったある日。市役所2階にある消防本部の電話のベルが鳴った。「消防団に入りたいのですが」と男性。職員は理由を尋ねた。「(台風災害時の)消防団員の一生懸命の姿を見て、私もぜひ入団したいと思いまして…」

 自然の猛威の前で、団員自身が無力さを感じたのはやむを得ないのかもしれない。だが、そう思わなかった人は確かにいた。


写真上:国道426号には土砂で立ち往生した車が残された(昨年10月21日)
写真下:秋季検閲に向けて今月18日に行った幹部訓練(三岳分団)

福知山のニュース両丹日日新聞