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両丹日日新聞2017年1月 3日のニュース

「人鷹一体」の伝統を後世に 鷹匠・衣川正幸さん

オオタカ 京都府福知山市夜久野町末の鷹匠(たかじょう)、衣川正幸さん(63)。鷹匠は、鷹狩りのためにタカやハヤブサを飼い慣らす人をいうが、今は本来の目的からは離れ、イベントで放鷹(ほうよう)術を実演したり、害鳥を追い払う作業をしたりするのが中心だ。衣川さんは、近隣に教わる人がいないため、我流で修業を積み、飼育や調教を地道に続けてきた。この道15年。卓越した技を習得して「人鷹(じんよう)一体」の伝統を後世に受け継ぐ。

 鷹匠は、かつて公家や武家に仕えて狩りに随行した。日本では1千年以上の歴史があり、今も宮内庁に役職が残る。技を後世に伝える団体もあるが、銃器が発達し、狩りを目的にはせず、自在に操ることに醍醐味を感じるのが主流になっている。

■自在に操る映画で憧れ■

 自然が豊かな夜久野で生まれ育った。もともと鳥好きで、子どものころ、旧中夜久野小学校で「老人と鷹」と題したテレビ映画を見て、衝撃を受けた。鷹匠の老人と仕える狩猟用のクマタカとの葛藤や友情を描いた作品。鷹を自在に操る老人の姿に憧れた。

 長年、織機の製造関係の自営業をしていたが、今は専業農家。鷹匠になるのは夢のまた夢だったが、生活に余力が生まれた48歳のころ、一念発起した。

■苦労の連続、鷹との根比べ■

 だが、大きな壁が立ちはだかった。飼育や調教を学ぶ人がいない。昔は京都市に猛禽類を扱う店があったが、それも看板を下ろしていた。

 「五里霧中で、一時はあきらめかけた」

 それでも、夢で終わらせたくはないと、夢中でインターネットで調べ、東京都の店でオオタカ2羽が販売されているのを探し出した。すぐさま向かい1羽を購入。しかし、気性が荒く、思い通りに育たず、半年後に死なせてしまった。「中途半端な気持ちで育てたのではないが、我流で無理があった。家族の一員のような存在だっただけに、涙が止まらなかった」
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 その後も苦労の連続だった。自分の思うように扱うことができず、専門書などを参考に、手法を少しずつ身につけた。

 最初は家の中で一緒に生活し、腕に止まらせての散歩を毎日続けた。車や他の人に会っても驚かないよう、警戒心を弱めるためだ。そして、獲物のカルガモなどの生息地で、実際に捕らえさせ、餌とすりかえることを繰り返す。「気難しい子が多く、手を焼きました。根比べの勝負をしているようでした」

■鳥ごとに異なる性格や能力■

 自宅横に鳥小屋がある。今はタカ科のオオタカ、ハリスホーク、ハヤブサ、ハヤブサ科のチョウゲンボウ(いずれも輸入したもの)を飼っている。
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 人と同じでそれぞれ性格や能力が違う。オオタカは神経質で調教は難しいが、動きが俊敏。ハリスホークは人に従順で、野をすべるように低空で飛行する。ハヤブサは人家が多い場所では使いにくいが、上空から200キロを超すスピードで急降下し、獲物の鳥を脚でけり落とす。

 多くの人たちの前で実演する放鷹術は、タカやハリスホークを自らの手から離し、笛を合図に戻らせる。空中に放った疑似餌を捕えさせる「振り鳩」や樹木から呼び戻す「渡り」、鷹匠から別の人に飛び移らせる「振り替え」などの技もある。

 狩りは京都府、大阪府、兵庫県の人たちに技を伝授しており、主に滋賀県の琵琶湖方面に出かけ、山里を歩く。キジやカルガモなどの捕獲率は1割に満たない。鷹狩りを楽しむのは「獲物の数を競うのではなく、鳥を操れたという達成感を味わいたいから」という。

■信頼がないと飛ばない鳥たち■

 人と鳥との適度な距離感を保つ必要性がある。「かわいがり過ぎると、人と同じで過保護になり、思うように飛んでくれない。それでも信頼関係を築かないといけない。個体ごとに性格を見極めることが大切です」
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 飛ばすまで2週間程度は飢餓状態にして、体重を2割程度落とす。「断食をさせるのは、かわいそうですが、追い詰めなければなりません。空腹にしないと餌を欲しがらず、狩り場や催しで本領を発揮できません」

 鳥小屋に入り、一日3、4回掃除し、ふんや尿の色で体調を判断。愛鳥の体重や体調を毎日記録する。

■文化として伝え自然保護も■

 「とても奥が深い鷹匠の世界。だれの指示でも聞くように調教しており、放鷹術を披露する催しでは、来場者に鷹などを操る体験をしてもらいます。鷹匠を伝統文化として後世に引き継ぎ、人と鳥が共生できる自然環境を守る大切さを伝えていくのも私の役目だと思っています」と使命感を抱く。鳥の能力を引き出すための努力の日々が続く。


写真上=神経質だが、動きが機敏なオオタカ
写真中上=ハヤブサ科のチョウゲンボウを手にする衣川さん
写真中下=大空で旋回し、衣川さんの手に戻るハリスホーク
写真下=翼を広げるハヤブサ

    

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