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両丹日日新聞2016年1月 2日のニュース

手話で朝が始まる消防署 全署で全員練習

職員がそろって手話を練習 福知山市の消防職員は朝礼(朝の申し送り)で、手話であいさつの練習をしている。「おはようございます」「いらっしゃいませ」−。市消防本部全体(福知山消防署、東分署、北分署)で、5、6年ほど前から続く。これは「手話の必要性を感じてほしい」と、山崎真治さん(55)=北分署分署長補佐兼警備第一係長=の提案で始まった。

■問い掛けに応じない傷病者■

 「お名前は?」「どうされましたか?」−。1981年に市消防本部に採用されたばかりで駆け出しだったころ、山崎さんは救急出動した現場で、意識がある傷病者に何度も問い掛けた。

 ところが、その傷病者は一切応じなかった。それでも質問を繰り返すと、「耳が聞こえない」というジェスチャーをしたという。そこで初めて聴覚障害者だと分かり、「応じない」のではなく、「応じられない」ケースがあることを知った。同時に手話の必要性を強く感じたという。

 一刻を争う救急現場で、傷病者のもとにいち早く駆け付ける救急隊員は、傷病者の症状を少しでも早く把握し、速やかに搬送先の医療現場へ伝えることが求められる。

 筆談ができるよう、メモを取るものはそろっているが、手話ができればよりスムーズな意思疎通ができる。

 しかし、若手職員だった山崎さんにとっては消防や救急に関して学ぶことがたくさんあり、どうしても手話にまで手が回らなかった。「手話のことはずっと気掛かりでした」

 勉強をスタートさせたのは2006年。仕事面では一通りのことを覚え、気持ちにゆとりを持てるようになっていた。手話奉仕団体「福知山手話サークルこづち」の存在を知り、講座を通して基礎から学ぶことにした。年齢は40代半ばだった。ろう者にも教えてもらいながら、少しずつ上達していった。

 そのかいあって、今では手話で日常会話ができるようになっている。
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 そのことが生かされたことがある。

 市北部の国道でのバイクツーリング中の交通事故。そのグループは全員がろう者だった。1台のバイクが転倒し、後続のバイクも倒れ、2人がけがをした。グループのリーダーらしき人らと手話でやり取りし、状況やけがの程度などが分かり、スムーズに搬送できた。「その手話の相手は(手話ができることに)驚いた顔をされていました」

 また、救急隊から要請され、ろう者の傷病者がいたことから病院へ向かったこともある。

 ただ、「日常会話は分かるぐらいですが、早い手の動きや、出会ったことがない人の手話は読み取りが難しい」と言い、こづちの学習会には、勤務がなければできるだけ参加している。習い始める年齢はいろいろで、定年になった人も学んでいる。

■積極的に学ぶ職員も■

 山崎さんは他の職員にも手話を覚えてほしいと、2008年、当時勤務していた東分署の分署長に掛け合い、朝の申し送りのときに全員で手話の練習をすることにした。その後、本署、北分署と消防署全体に広まり、市消防本部全体でするように。

 朝礼では、「おはようございます」「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」など決まった言葉を全員が手話でする。これに加え、「どこが痛いですか」「お名前は」など別の言葉でも練習している。

 継続してきた結果、手話の講習会に参加したり、独学で学んだりする職員もいて、現在は合計5人が日常会話程度ならできるように成長したという。

 福知山消防署の塩見雅邦署長は「毎朝実施することで意識付けになります。職員のレベルはそれぞれ違い、全員ができるわけではありませんが、できる職員を一人ずつ増やしていくことができれば」と話している。


写真上=朝礼で職員がそろって手話を練習している(東羽合の市消防防災センターで)
写真下=40代から手話を始め、日常会話はできるようになっている山崎さん(牧の福知山消防署北分署で)

    

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