WEB両丹

きょうあったいい話、夕飯までに届けます。京都府福知山市の情報を満載した新聞社サイト

タブメニュー

両丹日日新聞2016年1月 1日のニュース

福知山公立大学開学まで3カ月 実行すべき改革、将来の姿

福知山公立大学に生まれ変わる成美大学■初代学長 井口和起氏にインタビュー■
 福知山市西小谷ケ丘の成美大学が、福知山公立大学として生まれ変わるまで、あと3カ月。学長、副学長、事務局長の法人三役人事が決定し、教職員や法人の体制、カリキュラムも整いつつある。将来を左右する開学からの4年間、大学のかじ取りを任されたのは、京都府立大学の元学長で、福知山市出身の井口和起氏(75)=京都市中京区。初代学長として、実行すべき改革や将来の大学像、意気込みなどを聞いた。

 【福知山のご出身ということで、郷里での思い出は。また現状の課題について、どうお考えですか】

 幼少時代は、戦後の解放感もあって、まちがとてもにぎやかでした。夏場の旧市街地では、どこの街角でも、深夜まで盆踊りをしていたのを覚えています。
 市の課題は多様で、いますぐには答えられませんが、一言でいうなら、当時と比べて、まちに元気と活気がないという印象。夜のまちの暗さと静けさは、たまらなく寂しいですね。

 【学長就任について、相当悩んだとのことですが、その理由は。またなぜ引き受けられたのですか】

 悩んだ理由は、まず自分が高齢であるということ。もう一つは、館長や顧問という立場で、新しい府立総合資料館づくりに何年も携わってきて、ようやく来年度に建物が完成し、再来年度には新館が開館するという時期だから。最後の大きな課題が残っているときに、投げ出していいのか−との気持ちが強かったのです。
 一方、市の公立大学検討会議などで委員長を務め、学長も引き受けたというと、「お手盛りで自分が仕事を作って居座った」と受け取る方がいらっしゃるだろうとも思いました。
 それでも引き受けたのは、もうこの年だから私個人がどう見られようとかまわないと、少々開き直る気持ちが出てきたからです。
 賛否両論あるなかで、市が公立大学の開学をお決めになった。こうなった以上、失敗は許されない。ほかに引き受け手がないなら、故郷に少しでも恩返しできればと決断しました。

 【学生が住民とともに議論し、地域課題の解決を目指すという授業の構想について、具体的なプランは】

 まずはやってみないと分かりません。初めから市民のみなさんのご信頼を得られるとは思っていないし、本音で語ってくださることも少ないでしょう。信頼関係を築いていくために、まずは教員が先頭に立って学生たちとともに、北近畿地域のまちやむら、市民のみなさんの仕事と暮らしの現場に出向き、学ぶ姿勢で臨まなければならないと思っています。
 ゆくゆくは、教員や学生が住民との交流を通じて課題を見いだし、それを解決する方法を一緒に考え、ともに学びあう場になる、そういう授業が理想ですね。
0101gakucho.jpg
 【市と成美学園は昨年、それぞれ京都工芸繊維大学と包括協定を結びましたが、工繊大に限らず他大学との連携の展望はありますか】

 大学間の包括協定を結ぶだけでは意味がなく、具体的なプランを立てた上での交流が必要。教員同士の共同研究のほか、学生の交流も大切で、カリキュラムが確定してからの話ですが、単位互換なども検討したい。工繊大との文理連携もまだ構想の段階。さらに国際交流の夢もあります。少し時間をいただいて、具体化をめざしたいと思います。

 【大学をよりよいものにするためには、教員の意識改革が必要ではないかと思いますが、具体的にどういった方策を】

 年度内に、新しい大学の教職員全員で語りあえる場を持ちたい。教員は教育に関わる改革を中心に、職員は大学づくりの技能向上をめざして、共同で学びあいたいと考えています。

 【現行の地域経営学部では、将来的に厳しいとの意見があります。改編する予定はありますか】

 市がまとめた基本構想では、5年後にみらい創生学部に改編することになっていますが、今後の検討課題です。どういう学問をする場なのか、明確に市民や高校生が分かる名称と内容でなければならないでしょう。

 【5年先、10年先を見据え、学長としての夢、または大学の目指すべき姿は、どのようなものか教えてください】

 政府の地方創生政策と関わって、図書館を中核にしたまちづくりを進めている地域があります。知識の集積を次代に伝え、平等に提供するという本来の役割に加え、市民らの交流の場にすることによって、まちの中心にするというプランです。
 これを大学に置き換え、福知山公立大学を核にしたまちづくりはできないか。大学だから学生が中心ですが、授業やサークル活動などへの市民参加なども考えたいです。
 そして、まちの人たちが気軽に大学に来られるようにし、交流の場となり、大学からも学生や教職員がまちに出かける。自由に議論が巻き起こる関係が作れればいいですね。

 【公立大学の開学に賛否両論あるなかで、市民へのメッセージをお願いします】

 いまは水害からの復興や防災対策、福祉に税金を費やす時期で、大学にお金を使ってどうするんだ−という考えもあります。決して否定はしませんが、長期的な展望に立って、何かを成し遂げる作業を止めてしまえば、どんなまちになるか。緊急に必要な施策とは、分けて考えていただければ、ありがたいです。
 またお願いをするとすれば、新しくなる大学に来て、さまざまな活動に加わってほしいということ。そのうえで、具体的に賛成なり、批判なりの意見がいただきたい。ただ、大学づくりには少なくとも数年間かかります。長いスパンで活動に加わっていただき、判断してほしいと思います。

……………………

■開学までの経緯■

 学校法人成美学園が運営する成美大学(旧京都創成大学)は、市民の期待を背負い、2000年4月に市が約27億円を支援する「公私協力方式」で開学。当初から定員割れが続き、近年は数億円の赤字を計上し、経営危機に陥っていた。
 14年に、北近畿唯一の4年制大学を守ろうと、市民有志が募った公立化の要望書が提出され、市は4年制大学のあり方に関する有識者会議、公立大学検討会議を設置し、存続の可否などを議論してきた。
 その結果、地方創生のためにも大学の存続が必要と判断し、公立大学への転換を決断。市民のほか、市議会でも厳しい意見が出されたが、公立大関連の5議案が9月定例会で可決され、文科省や府に運営母体となる公立大学法人の認可申請などを提出した。
 これらが昨年11月に認可されたことを受け、市は学長就任予定者などを公表。現在も開学に向け、カリキュラムの作成などに急ピッチで取り組んでおり、2、3月には一般入試、またセンター利用入試も控えている。
 開学当初は、地域経営学部の1学部で、地域経営学科は定員40人、医療福祉マネジメント学科が定員10人のため、合わせて50人ほどを迎え、在学生105人と合わせ約150人で、新体制のスタートを切る。

写真上=福知山公立大学に生まれ変わる成美大学
写真中=公立大学への思いを語る井口氏
写真下=成美大には公立大学をPRする懸垂幕などが掲げられている

    

[PR]



株式会社両丹日日新聞社 〒620-0055 京都府福知山市篠尾新町1-99 TEL0773-22-2688 FAX0773-22-3232

著作権

このホームページに使用している記事、写真、図版はすべて株式会社両丹日日新聞社、もしくは情報提供者が著作権を有しています。
全部または一部を原文もしくは加工して利用される場合は、商用、非商用の別、また媒体を問わず、必ず事前に両丹日日新聞社へご連絡下さい。

購読申込 会社案内 携帯版 お問い合わせ