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両丹日日新聞2014年9月 9日のニュース

検証・福知山豪雨(上):排水能力超えた市街地の雨

0905wakuiti.jpg 8月の豪雨災害では、福知山市の市街地を中心に、広範囲にわたる約2500戸が浸水した。これまで市民が経験してきた由良川本流からの水害とは違い、支流の氾濫(はんらん)と市街地の排水能力不足による内水が原因だった。あの夜、福知山で何が起こっていたのだろう。

 福知山中心部の17日午前5時50分までの24時間雨量は、観測史上最高の303・5ミリを記録した。特に一番雨脚が強まった16日午後11時から17日午前5時までの6時間雨量は、平年の8月1カ月間の1・6倍にあたる205・5ミリに達した。

 1時間の最大雨量は62ミリ(17日午前3時−4時)となり、局地的には約90ミリの猛烈な雨になった地点もあると見られる。市周辺部の坂浦27ミリ、三和34ミリに比べても極端に多い。

 大雨の際に市民が心配するのは由良川の氾濫。しかし今回、由良川流域は上流部での降雨は少なく、福知山観測所の水位は計画高水位7・74メートルよりも低い6・48メートル。堤防にはまだ余裕があったが、市街地で局地的に雨が激しく降ったことで、市街地の排水が追いつかなかった。街中を流れる由良川支流の弘法川、法川などの小河川が氾濫した。弘法川沿いに住む和久市町の男性(66)は、17日未明の雨を「終わらない夕立のようだった」と振り返る。

■弘法川、法川の整備規模上回る■

 弘法川と法川を管理する府は、「10年に一度の豪雨に備える」として、1時間50ミリの想定で河川整備を進めてきた。未改修部分はあるものの、ここ10年にあったような雨なら、一定の流下能力は保ってきた。しかし「今回は整備規模を超えた雨。能力を上回ると氾濫を止めようがない」(府中丹西土木事務所)。弘法川上流部の山の土砂崩れによる流木や土砂が多く堆積したことも、浸水拡大の一因と見ている。

■28水の雨想定のポンプ追いつかず■

 1953年(昭和28年)の「28水」で浸水した内記、中ノ、北本町周辺の旧市街地127ヘクタールの治水対策として市が整備した和久市ポンプ場(鋳物師町)は、1963年の建設。汚水と雨水が同じ下水道管を通ってポンプ場に流れ、通常時は終末処理場へと送り、雨で許容量を超える場合はポンプ4基を起動させて由良川に放流する仕組みになっている。

 63年当初は1時間40ミリの雨を処理できる設計だったが、その後も街中で浸水被害が続いたことから計画を見直し、01年度〜12年度で区域4カ所に地下貯留槽(1万3300トン)を設置することで対応能力を1時間55ミリに補強していた。それでも追いつかなかった。市街地を浸水した内水がポンプ場にも押し寄せて約80センチ浸かり、4基のポンプは全て故障、17日午前5時に運転が止まった。
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 市が弘法川西側の内水対策で篠尾新町、厚中問屋町の3カ所に設置した地下貯留槽(5千トン)は、雨のピークを迎える17日未明より早く、16日午後11時ごろにはすでに満杯になっていた。

 貯留槽は完成からまだ2年。床上浸水にあった篠尾新町の女性は「貯留槽が完成したから浸水はないと安心しきっていた」と漏らした。

 弘法川、法川と由良川との合流地点など3カ所にある国の排水ポンプ場も16日夜から稼働させたが、排水能力は「28水」の雨を想定した設定で、今回の局地的な豪雨に対しては能力不足だった。更に落雷による停電などで、この3カ所のポンプが6分間−50分間にわたり一時停止した。その影響は無視できないが、仮にフル稼働していても、大きな被害軽減になったかどうか。荒河の弘法川救急排水ポンプ施設(処理能力毎秒5トン)が50分間停止する前、すでに周辺は水につかっていた。

 被災後に弘法川を訪れた国立舞鶴高等専門学校名誉教授の川合茂さん(66)は「流量は(ポンプ場の処理能力をはるかに超える)毎秒20トンどころではないようなレベルだったと考えられる。それほどの雨だった」と話す。

 前例のない事態となった今回の豪雨災害だが、次がないとは言い切れない。台風シーズンが近づき、被災者は不安を抱えている。前述の弘法川沿いの男性は言う。「ポンプが止まったから浸水被害が広がったなど、いろんな話が飛び交って錯綜している。水害の原因をはっきりさせて、抜本的な治水対策をしてほしい。こんなことが何回も起きたら困るよ」


写真上=内水被害で住宅密集地の市街地が浸水した(近畿地方整備局福知山河川国道事務所提供=17日午後4時47分撮影)
写真下=和久市のポンプ場が停止する1時間前、すでに市街地に泥の海が広がっていた(8月17日午前4時ごろ篠尾新町で)

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