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両丹日日新聞2012年3月 7日のニュース

あすへの教訓(3)子のためにと福島からの移住決断

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 市営住宅に子どもたちのはしゃぐ声が響き、寝室では赤ちゃんがすやすや眠っている。妻の笑顔と、平穏な日々がある。「これでよかった」。福島から福知山市に移り住んだ遠藤さん(35)は、そう思う。

■心温めた地域の人の支援■
 
 「何としても子どもを守る」。その一心だった。福島第一原発事故の発生を受け、妻と子ども2人を連れて見知らぬ土地へやって来て、もうすぐ1年になる。当初は不安だらけだったが、市民の歓迎や温かい支援があった。おかげで、少しずつだが生活は安定してきた。
 
 震災の影響で、やむなく古里を去る決意を固め、新天地での生活を選んだ人たちは多い。福知山市内にも、新たな就農先を探して移住した夫婦ら、市が把握しているだけで10世帯22人が居住している。
 
 福島県いわき市から、福知山市が用意した三和町芦渕の市営住宅に、家族で転居してきた遠藤さんも、その中の一人だ。
 
 いわき市小名浜にある遠藤さんの家は、海岸から1キロほど山側にある。震災による被害は少なく、家族全員が無事だった。
 
 しかし福島第一原発から約40キロという距離。放射能による子どもたちへの影響が心配で、とことん悩みぬいた末、「1キロでも遠くへ」と、西日本への移住を決意した。
 
 妻も同じ気持ちであることを確認し、3月26日に幼い長男と長女を連れて、三和町へ引っ越してきた。
 
 当時は、古里を離れることが「裏切り者」扱いされた。話を切り出せない状況に苦しんでいたが、「誰に何と言われようと、子どもたちが安心して暮らせればそれでいい」と決断した。この選択が間違いだったと思ったことは、一度もない。
 
 何より、福知山の人たちが「移住できてよかったね」と優しく迎えてくれた。「味方がいると思えて、とても心強かった」と振り返る。
 市民の善意による支援も心を温めてくれた。入居時には毛布類しかなかった部屋が、今では市民から届いた家財道具であふれている。
 
 仕事に就くことができ、金銭面でも徐々に安定してきた。「ご近所さんも親切にしてくれるし、子どもを育てるには最高の環境です」と笑みがこぼれる。
 
 心の落ち着きが得られたからこそ授かった新たな命。1月31日に市内の病院で無事、次女が産声をあげた。名前は平穏で乱れないことという四字熟語「安寧秩序」からとった。
 
 「福島原発事故は、経済的な部分ばかりを追い求めた結果。物理的な復興よりも、本質的な心の復興を早く実現できるよう祈っています」。そんな願いも名前に込めた。
 
 「福島の人たちに、移住という道を選んでも幸せに暮らす家族がいることを知ってもらい、古里を離れることについて、今でも悩んでいる仲間の後押しができればうれしい」
 
 遠藤さんの優しい視線の先には、子どもたちの笑顔があった。
(松本祥平記者)
 
 
写真=転居してきた一家が暮らす市営住宅
 
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