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両丹日日新聞2009年1月 3日のニュース

農の世界へジャンプ 水稲苗2万2000枚を出荷

0101matusita01.jpg 1シーズンに出荷する水稲苗は約2万2000枚。JA京都福知山支店管内の水田の3分の1以上は、松下重憲さん(38)=長田南=が育てた苗を使っている計算になる。農業体験の全く無い、福知山城を見上げて育った“街の子”が、結婚を機に農業に打ち込むようになり16年。壁もあったが「周りの人たちの助けで乗り越えてくることができました。会社員から転身して、後悔したことは一度もありません」
 

■モトクロスとギターに夢中の少年時代■
 
 青年農家として府内でも大きな期待を集める存在だが、少年時代は別の注目の集め方をしていた。中学3年からバイクに夢中になり、内記一丁目の自宅からモトクロス場へ通いつめ、レースで活躍をした。その縁で関係会社へ高校卒業と同時に就職。サラリーマンをしながら、旧野田川町が開く教室でフォークギターを教えたりもした。
 
 そんな若者が農業と出あったのは22歳の春。付き合っていた同い年の泉さんが、春は家の農作業が忙しくて時間が取れないという。「それならデート代わりに手伝いに行くわ」と出かけて行ったのが最初だった。
 
 初日は土をスコップですくってベルトコンベアーに乗せる簡単な作業。自分が何をしているのかは分からなかったが、何度も通い、いろんな作業を見たり体験したりするうち「農業って、おもしろいな」と思うようになった。
 
 頑張れば頑張っただけの結果が出る。こんな仕事があったんだ!
 
 心が震えた。

■会社員からの転身■
 
 泉さんは3人姉妹の二女。父・栄治さん(72)は「継ぐもんがおらんかったら、農業はわしで終わったんでええ」と言っていた。「なら、私に継がせて下さい」。婿に入り、農家を継ぐことになった。
 
 バイクレースで背骨を痛めていたこともあり実家の両親は「そんな体で農業ができるのか」と心配したが、体を動かし、筋肉をつける方が良いと医師から言われていたこともあり「大丈夫」と返事。「中途半端に投げ出すなよ」との言葉で送り出してもらった。
 
■義父が先生厳しい指導■
 
 育苗用のビニールハウスは20棟。2月からビニールをかけ始め、土の支度をして、種の手配をしてと、慌ただしくシーズンを迎える。4月から6月にかけては毎日フル回転。栄治さんの農業指導は厳しかった。そのおかげで、技術や知識をきっちり身につけることができた。
 
 2000年のことだった。栄治さんから「一通り覚えたさかい、これからはおまえなりにやれ」と、仕事を任せてもらうことになった。まだ自信はなかったが、「分からんことがあったら農協でも、わしにでも聞いたらええで、とにかく、やりたいようにやれ」との信頼の言葉が大きな励みになり、自身が先頭に立っての農作業が始まった。
 
■失敗、言いわけ許されぬ作業■
 
 育苗の仕事で一番難しいのは出荷日が決まっている点。田植えの日に向けて農家は代掻(しろか)きなど、何日も前から準備を進める。苗の生育が早まったり遅れたりしたからと、出荷日をずらすと田植えが出来ない。「仕事として請け負った限りは、天候といえど、言いわけにできません」。それがプロだ−と言い切る。
 
 種まきは7、8人がかり。ハウスに苗を並べる日は10人で仕事をする。一つ段取りが狂うと、次々と狂ってしまう。やり直しがきかないとあって、24時間気が抜けず、深夜にも見回りをする。夜中に機械が故障して大慌てで交換したこともある。「パートのみなさん、JAさん、農機具屋さん、電気工事屋さん、それに家族。どれか一つ協力が欠けても仕事にならない。本当に、みなさんに助けてもらってるんです」
 
 協力という面では、認定農業者による福知山農業経営者会議の存在も、大きな支えだ。地域の農業の担い手たちが集まる組織であり、ベテランの年配者たちが顔をそろえる。“うるさ型”も多いが、こうした面々が「おい、こないだの苗は良かったぞ」「何日の苗は、あかんかった」と、評価を直接聞かせてくれるのが励みになっている。
 
■安心、安全で安定した農業を■ 
 多くの人に支えてもらっている恩返しにと、協力できることは、できるだけ受けることにしている。特定栽培米の実証も、その一つ。
 
 消費者が求める安心、安全を実現しつつ、生産農家が求める「安定」した栽培をするのが、特定栽培米。有機肥料を使い、農薬は極力少なく。モデルケースとして栽培し、昨年4月のJA京都福知山特別栽培米部会発足につながった。
 
 自身が手掛ける水田は計3ヘクタール。「この2倍、3倍の面積で栽培しないといけないんですけど」。育苗の仕事が終わるころになってからでないと、自分の田の準備に手が回らず、今以上の規模拡大は出来ない。「なんせ、よその田んぼが青くなってるのに、まだ茶色いままなのが、うちですから」と明るく笑う。
 
 どんなにしんどい時も、笑顔を忘れない。笑顔で仕事をしていれば、自分の3人の娘たちが、それを見て育ってくれるから。「おやじ(栄治さん)が一線で元気に働いてもらっているように、私も死ぬまで、この仕事を続けます」
 
■改めて初心に■
 
 昨年、うれしいことが二つあった。痛めていた背骨が「もう大丈夫。バイクに乗っていい」と医師から許可を得た。以前のように高い所からのジャンプはできないが、またバイクに乗って風を感じられるようになった。もう一つ。11月に府農林水産フェスティバルで第1回若手農林漁業者表彰を受けた。「認めていただけ、素直にうれしく、また初心に戻ることができました」。表彰会場で、一緒に表彰を受けた畜産農家や青年漁業士らと、ステージを見上げながら語り合った。「何年かたったら、今度はアレをもらおうな」。ステージ上には農の匠、山の匠、海の匠(府農山漁村伝承優秀技能認定者)認定を受けるベテランたちの誇らしげな笑顔があった。
 
 
写真=水稲苗栽培に励み「多くの人に支えてもらえ、ありがたいです」と話す松下さん
 
 

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